さまざまな分野で応用できる「分子シミュレーション」
実験の前に予測を立てる
コンピュータによる分子シミュレーションは、分子・原子レベルのあらゆる現象に応用できます。例えば「オゾンホール形成に関わる大気反応のメカニズムを知りたい」という地球規模の現象の根本に関わる分子シミュレーションもできます。ですから、いろいろなメーカーが「商品開発にシミュレーションを使いたい」と考えています。商品開発にかかる実験の時間と経費を節約できるからです。特に創薬については、何万通りの合成物を試す必要がありますから、実験の前段階でおおまかな予測を立てるためのツールとして、分子シミュレーションが必要なのです。
次世代スパコンで広がる可能性
万能に見える分子シミュレーションですが、欠点があるとすれば、計算で扱うことができる分子の数に限りがあることです。近年、シミュレーションは大規模化しています。理化学研究所計算科学研究センター(神戸市)に設置されたスーパーコンピュータ「京(けい)」によって計算できるのは、数十万から数百万の分子シミュレーションまでです。「京」は2019年8月16日に計算資源の共用を終了し、性能が100倍程度に向上した新しい「次世代のスーパーコンピュータ」に置き換えられる予定です。そうなると分子シミュレーションができる規模は拡大するはずです。
動画で直感的に現象を理解できる
実験と比べるとシミュレーションは分子の挙動を動画にして直接見ることができるので、直感的に現象を理解できます。現在の研究は「実験でわからなかったことを、シミュレーションで明らかにする」というスタンスですが、今後は「シミュレーションが予言したことを、実験で確かめるというレベルにまで手法を向上させる」ということが目標となります。
研究ツールとしてさまざまな可能性がある分子シミュレーションですが、この分野に携わる研究者は全国に散らばっています。共同研究の機会が広がれば、分子シミュレーションが多くの分野で応用されるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
富山大学 工学部 工学科 応用化学コース 准教授 石山 達也 先生
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