認知症の予防・治療に期待が高まる「BDNF」の探究
BDNFとは
BDNFとは「Brain-derived neurotrophic factor」の略で、日本語では「脳由来神経栄養因子」です。脳にある神経細胞が作り出すタンパク質で、神経細胞の活性にとって重要な役割を果たしています。特に、記憶や認知機能に果たす役割が大きく、BDNFの濃度が低いと加齢に伴う認知機能の低下が起こりやすいことが報告されています。また、BDNFの濃度は、パーキンソン病、うつ病、統合失調症などのさまざまな脳の疾患で低下していることがわかっています。このことからも、BDNFが神経細胞の活性化に重要であることがわかります。
認知症の予防・治療に
BDNFは、加齢によって、ある程度は減少します。また、BDNFはただ多ければいいわけではなく、適切な時期に適切な量が作られることが大切であることもわかってきました。もし、減りすぎたときに、適切にBDNFを増やすことができれば、認知症の治療や予防ができる可能性があります。
BDNFを試験管の中などで作って、体に投与して増やすことは極めて困難です。体内に入れても、さまざまな関門があって脳の神経細胞まで届くことは困難だからです。そこで、神経細胞にBDNFを作らせる物質を見つけ、その物質が脳の神経細胞に届くことが確認できれば、好きなときにBDNFを増やすことができ、認知症の治療・予防薬につながります。
食品や生薬にも期待
めざす物質を見つけるためには、地道な実験が必要です。神経細胞にさまざまな化合物を投与して、BDNFが増えるものを探します。見つかったら、脳まで到達して脳で効くかどうかを、動物実験で確かめるのです。
別の病気の治療薬として承認されているものの中から、目当ての物質を見つけることができれば、認知症の薬として使用する道が開けます。また、薬だけでなく、食品や生薬(漢方薬の原料になる天然物)に対象を広げた実験も行われています。BDNFを増やす食品が見つかれば、人類にとって大きな朗報となることは間違いありません。
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先生情報 / 大学情報
高崎健康福祉大学 薬学部 薬学科 教授 福地 守 先生
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