講義No.10610 薬学 生物学

認知症の予防・治療に期待が高まる「BDNF」の探究

認知症の予防・治療に期待が高まる「BDNF」の探究

BDNFとは

BDNFとは「Brain-derived neurotrophic factor」の略で、日本語では「脳由来神経栄養因子」です。脳にある神経細胞が作り出すタンパク質で、神経細胞の活性にとって重要な役割を果たしています。特に、記憶や認知機能に果たす役割が大きく、BDNFの濃度が低いと加齢に伴う認知機能の低下が起こりやすいことが報告されています。また、BDNFの濃度は、パーキンソン病、うつ病、統合失調症などのさまざまな脳の疾患で低下していることがわかっています。このことからも、BDNFが神経細胞の活性化に重要であることがわかります。

認知症の予防・治療に

BDNFは、加齢によって、ある程度は減少します。また、BDNFはただ多ければいいわけではなく、適切な時期に適切な量が作られることが大切であることもわかってきました。もし、減りすぎたときに、適切にBDNFを増やすことができれば、認知症の治療や予防ができる可能性があります。
BDNFを試験管の中などで作って、体に投与して増やすことは極めて困難です。体内に入れても、さまざまな関門があって脳の神経細胞まで届くことは困難だからです。そこで、神経細胞にBDNFを作らせる物質を見つけ、その物質が脳の神経細胞に届くことが確認できれば、好きなときにBDNFを増やすことができ、認知症の治療・予防薬につながります。

食品や生薬にも期待

めざす物質を見つけるためには、地道な実験が必要です。神経細胞にさまざまな化合物を投与して、BDNFが増えるものを探します。見つかったら、脳まで到達して脳で効くかどうかを、動物実験で確かめるのです。
別の病気の治療薬として承認されているものの中から、目当ての物質を見つけることができれば、認知症の薬として使用する道が開けます。また、薬だけでなく、食品や生薬(漢方薬の原料になる天然物)に対象を広げた実験も行われています。BDNFを増やす食品が見つかれば、人類にとって大きな朗報となることは間違いありません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

高崎健康福祉大学 薬学部 薬学科 教授 福地 守 先生

高崎健康福祉大学 薬学部 薬学科 教授 福地 守 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

薬学、神経科学、分子生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

なんといっても「人との出会い」が、人生の財産になります。思わぬ人とのさまざまな出会いが、人生を豊かにしてくれるので、高校時代に限らず、どんな出会いも大事にしてください。また、興味のあることを突き詰めるのは大切ですが、興味・関心というものは、その時々で変わることもあります。
私自身、薬剤師になるつもりだったのですが、所属した研究室、先生方、研究対象との出会いに導かれ、気がついたら研究者になっていました。変化を恐れず、面白いと思ったことにどんどん挑戦し、人生を切り開いてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

高崎健康福祉大学に関心を持ったあなたは

高崎健康福祉大学は「あなたの笑顔が、わたしの笑顔」となるために7つの道で考え抜く大学です。乳幼児からお年寄りまで、あらゆる世代をカバーする「健康」「医療」「福祉」だけに特化した5学部・8学科をそろえ、人を支えることの出来る、前向きなチカラを育てています。