見たこともない物質を合成できる超高圧ってすごい

見たこともない物質を合成できる超高圧ってすごい

ダイヤモンドも超高圧で誕生した

物質に数万気圧の超高圧を加えると、新しい物質を合成できます。同じことは自然界でも起こっていて、地下数百kmに相当する超高圧環境にある炭素は、ダイヤモンドに変化します。この方法で合成された物質の中で、安定した結晶構造の物質は、地上の1気圧の環境でもその状態を保ち、元の物質とは異なる性質や機能を持っています。そこで研究者は、さまざまな元素を組み合わせることで新しい物質を合成して、社会に役立つ機能や性質を発見しようとしています。

いかに役立つ物質を作るか

超高圧で安定した結晶構造はいくつかありますが、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造が代表的です。この構造を持つ物質を合成して、性質や機能を確かめていきます。例えば、鉄やコバルト、銅などを含む化合物を超高圧で合成すると、水から水素を製造する「水分解」の触媒として機能する物質ができます。この触媒を使うと、水分解の変換効率が数十%も上がります。さらに、周期表上のさまざまな元素で置換することで、安定性や機能性を向上させる研究が進められています。太陽光などの再生可能エネルギーを用いて水素燃料を大量に製造する技術は、化石燃料に頼らない未来を作るために極めて重要です。

目的が明確ではない研究が未来を変える

このような目的が決まっている研究のほかに、用途が明確でない新物質を合成する研究もあります。新物質ですから、最初から物性や機能がわかっているわけではありません。また、すでに存在する物質の中にも、まだ発見されていない物性や機能もあります。そのため、それらを見出すための研究も必要です。つまり、新物質を作る研究と既に存在する物質の物性や機能を分析する2つの研究があるわけです。どちらも重要ですが、新物質の合成には、これまでに存在しない思いがけない物性や機能を発見し、未来を大きく変える可能性を秘めています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 工学部 マテリアル工学科 教授 山田 幾也 先生

大阪公立大学 工学部 マテリアル工学科 教授 山田 幾也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

材料化学、固体化学

メッセージ

今から大学でどのような研究をしたいかを考えておくと、大学入学後はもちろん、受験勉強を乗り切る力になると思います。
私は、超高圧合成法という人工ダイヤモンドの製造でも使われる手法で、新物質や新材料の合成を行っています。研究室にいながら、周期表上の世界を探検している感覚に陥る、非常に不思議な手法です。これは日本が強い分野のひとつで、新物質の発見者は論文や教科書、データベースなど科学の歴史に永久に名前が残ります。興味さえあれば、あなたもそのような研究に携われる可能性があると思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。