頭の中に「もう一人の自分」がいる!?

頭の中に「もう一人の自分」がいる!?

私たちは「忘れたこと」をわかっている

テストなどを受けているとき、憶えたはずなのに「忘れた」「思い出せない」という経験があると思います。私たちはその物事が思い出せなくても、「忘れた」ということはわかっているのです。ということは、自分が憶えたことを、頭の中で監視している「もう一人の自分」がいるともいえます。このような働きのことを、心理学では「メタ認知」といいます。「メタ」とは「ひとつ上の」という意味で、心理学における「認知」とは、見る、聞く、話すといったときの心の働きを指します。つまり、メタ認知とは、私たちの思考や言動などをコントロールしている、もうひとつの心の働きともいえます。

もう一人の自分「ホムンクルス」

「もう一人の自分」は「ホムンクルス」とも呼ばれています。ホムンクルスは、あなたがやっていることを監視し、あなたが間違っていたら「そこ間違っているよ」と教えてくれることもあります。ところが、たまに「もう一人の自分」が寝ていることもあり、そのとき私たちは、普段はやらないような言い間違いなどのミスをしてしまうのです。近年、このホムンクルスと、学習時の頭の働きとの関係を解明し、勉強にも活用しようという研究が行われています。

メタ認知の仕組みを勉強に生かす

子どもが文章題を解いているとき、何をしているかを詳しく聞いた調査があります。すると、うまく解ける子どもは、文章中に「~ですか?」と聞いている箇所を探すという回答がありました。問題を理解するため、何が重要なのかを考えているということは、ホムンクルスが頭を監視しながら解いているともいえます。この仕組みが生かされているのが“教え合い”という勉強法です。間違いなどを指摘する役割を自分や他人がやることで、自らのホムンクルスの働きを促すことにもつながると考えられているのです。最近、このようなメタ認知の仕組みは盛んに研究されており、認知心理学の重要な学問領域となっています。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 現代システム科学域 心理学類 教授 岡本 真彦 先生

大阪公立大学 現代システム科学域 心理学類 教授 岡本 真彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

心理学、教育心理学、認知心理学 

メッセージ

私の専門は、発達心理学と教育心理学です。研究対象は主に3~13歳の子どもで、心の働きがどうなっているかを調べ、それを教育に生かす研究をしています。最近、特に興味を持って研究しているのが、数の認識です。私の大きな夢は、算数や数学が上手に教えられるようになって、算数や数学の嫌いな子どもがいなくなることです。そのために、どのように数を認識し、どうやって数を頭の中で扱っているのか、ということを研究しています。近年、これらの研究は世界的にも注目されています。あなたもぜひ、この研究に参加してください。

先生への質問

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大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。