頭の中に「もう一人の自分」がいる!?
私たちは「忘れたこと」をわかっている
テストなどを受けているとき、憶えたはずなのに「忘れた」「思い出せない」という経験があると思います。私たちはその物事が思い出せなくても、「忘れた」ということはわかっているのです。ということは、自分が憶えたことを、頭の中で監視している「もう一人の自分」がいるともいえます。このような働きのことを、心理学では「メタ認知」といいます。「メタ」とは「ひとつ上の」という意味で、心理学における「認知」とは、見る、聞く、話すといったときの心の働きを指します。つまり、メタ認知とは、私たちの思考や言動などをコントロールしている、もうひとつの心の働きともいえます。
もう一人の自分「ホムンクルス」
「もう一人の自分」は「ホムンクルス」とも呼ばれています。ホムンクルスは、あなたがやっていることを監視し、あなたが間違っていたら「そこ間違っているよ」と教えてくれることもあります。ところが、たまに「もう一人の自分」が寝ていることもあり、そのとき私たちは、普段はやらないような言い間違いなどのミスをしてしまうのです。近年、このホムンクルスと、学習時の頭の働きとの関係を解明し、勉強にも活用しようという研究が行われています。
メタ認知の仕組みを勉強に生かす
子どもが文章題を解いているとき、何をしているかを詳しく聞いた調査があります。すると、うまく解ける子どもは、文章中に「~ですか?」と聞いている箇所を探すという回答がありました。問題を理解するため、何が重要なのかを考えているということは、ホムンクルスが頭を監視しながら解いているともいえます。この仕組みが生かされているのが“教え合い”という勉強法です。間違いなどを指摘する役割を自分や他人がやることで、自らのホムンクルスの働きを促すことにもつながると考えられているのです。最近、このようなメタ認知の仕組みは盛んに研究されており、認知心理学の重要な学問領域となっています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 現代システム科学域 心理学類 教授 岡本 真彦 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
心理学、教育心理学、認知心理学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?