投資において、大きく値下がるリスクを防ぐには?
単純な計算式では表せない株式市場
金融(ファイナンス)の分野には、投資比率を決定する「ポートフォリオ理論」という理論があります。標準的なポートフォリオ理論では、例えばA社とB社の株価の関係を「相関係数」を使って表します。このポートフォリオ理論を用いれば、どのように金融資産を組み合わせればリスクを小さく抑えられるかということが導きだされます。市場の中で同じような値動きをする(正の相関がある)銘柄同士よりも、逆の値動きをする(負の相関がある)銘柄を組み合わせるほうが、リスクは低く抑えられます。
複雑な関係を探ることがリスクを減らす
しかし現実には、その相関関係が常に一定というわけでもないことがあります。例えば、米国の株式市場の株価が大きく下落するときには、日本の株価もつられて下落する一方で、米国の株価が大きく上昇したときに日本の株価はそれほど上がらない「非対称な関係」がしばしば観察されます。これは、「金融資産の間の関係はとても複雑」という事実を示しています。つまり、標準的なポートフォリオ理論に頼って投資をすると、判断を誤る可能性があるということです。このような問題点に対して、金融資産の間の複雑な関係をデータから探り出し、既存のポートフォリオ理論に反映する動きが生まれています。理論とデータの融合によって、さらなるリスクマネジメント技術の向上が期待できるのです。
投資を自分の人生に置き換えて考える
「分散投資することでリスクを減らす」というポートフォリオ理論の考え方は、私たちの人生にも当てはめて考えることができます。例えば、1つの限られた職場からしか賃金を得ていないことはリスクともいえます。会社の経営不振や自分自身に何かが起こって所得が下がる可能性があるからです。そこで、副業をしたり、株式に投資したり、保険に加入したり、結婚したりすることで、所得が減少するリスクを減らすことができます。ポートフォリオ理論を学べば、人生の様々なリスクに対してもうまく対処できるようになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 経済学部 経済学科 教授 立花 実 先生
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