古文書が語る地域の歴史-歴史を発見する面白さ
史料から知る民衆の姿
日本史を動かしていたのは、朝廷や武家などの権力者だけではありません。その時代を生きた民衆の活動もたいへん重要な意味を持っていました。日本では中世後期から近世にかけて、各地の村や町、商手工業者の同業組織などで、人々の暮らしや活動にかかわる文書が作られ、保管されるようになります。現存する古文書を読み解いていくことで、現代にもつながる村や町といった地域社会がどのように形成されてきたのか、人々の活動を通して具体的に知ることができます。
さまざまな古文書
江戸時代といえば、かつては「士農工商」の身分で区切られた社会というイメージがありましたが、現在そのような「固い」身分制の理解は払しょくされています。近世の古文書のなかには、領主である幕府や藩に対して書かれた願書(要望書)がたくさん見つかっています。そこでは身分集団である村や町、仲間などに属する人びとが、さまざまな身分の人々と複雑な社会関係を取り結び、自らの利害を巧みに主張することで社会の運営や制度づくりに積極的に取り組もうとした姿が読み取れます。また、村や町、仲間・組合などの小さな集団の内部規定を記した文書も多数残っており、現代にも通じる厳密な組織運営が、江戸時代から地域社会に行き渡っていたこともわかります。例えば、村落の「若者組」に関する史料も残されており、いまの高校生・大学生に相当する青年(若者)たちの活動について、当時の社会構造と関わらせて歴史的に考えることも可能です。
歴史を発見する面白さ
歴史の教科書を読むと、日本史のかなりの部分がすでに明らかにされているように感じますが、実はそうではありません。例えば近世の村役人(庄屋・名主)や有力商人などの末裔(まつえい)の家から未発見の古文書が新たに発見されることもあり、近世だけをとってもまだまだわかっていないことが多いのです。現代まで残されてきた古文書を通して民衆の生活や活動に迫り、「社会」の側から歴史を考えていくことが大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 文学部 哲学歴史学科 准教授 齊藤 紘子 先生
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歴史学、日本近世史、社会史先生が目指すSDGs
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