周期表はどこまで続く? 未知の元素を求めて

新しい元素を人工的に作り出す
「この世界は何からできているのか?」——それは、古来より人類が抱いてきた根源的な問いです。紀元前には物質は火・水・土・空気の4つからなると考えられていましたが、今では原子の存在が知られています。原子は、中心にある原子核の持つ陽子の数によって「元素」に分類されます。自然界に安定して存在する元素はウラン(92番)までですが、人類はこれまでに118番までの元素を人工的に作り出すことに成功しています。その中でも113番元素は初めて日本のグループによって発見され、2016年に「ニホニウム」と命名されました。
119番元素を求めて
新しい元素を作るには、長さ数10メートルの大型装置「加速器」で、原子核を秒速3万キロメートルの速さに加速し、別の原子核にぶつけて融合させます。ニホニウムの実験では合わせて1垓個(1兆個の1億倍)の亜鉛の原子核をビスマスに照射し、400兆個が衝突し、わずか3個の113番元素が生まれました。何年もかかる根気のいる実験ですが、発見に成功すれば、人類の「知のレガシー(遺産)」である元素周期表を書き換える快挙となります。
現在、世界中で注目されているのが、未発見の119番元素です。この元素は周期表の「第8周期」という人類未到の領域にあると予想され、いくつものチームがその発見を競っています。日本のチームは23番元素バナジウムと96番元素キュリウムを衝突させ、世界に先駆けて119番元素を生み出そうと挑戦を続けています。
未来を変える性質の発見へ
新しい元素を作り出す目的は、周期表の拡大に留まりません。何番の元素までが存在しうるか、何がその限界を与えるのか、という問いに答えるためでもあります。また、重い原子の中では電子が光速に近い速さで飛び回り、相対論の効果で電子の軌道が歪むため、重い元素は誰も目にしたことのない新たな性質を持つと予想されています。新元素の発見は人類の知の地平線を広げ、未来を大きく変えるかもしれません。
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九州大学理学部 物理学科 教授坂口 聡志 先生
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原子核物理学、実験物理学、加速器科学先生が目指すSDGs
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