レーザーでナノ世界の仕組みを解明
レーザーで見るナノ世界
太陽電池は、光が当たると電流が発生する材料を利用したものです。ただし電流が生まれるまでには、内部で多段階の現象が起こっています。そのひとつひとつを観察するのに必要な技術が「分光」です。1990年代より、1000兆分の1秒にあたるフェムト秒スケールという、ほんの一瞬に特殊なレーザー光を当てることで、1ナノメートル以下の原子の世界までも高い分解能で観察できるようになりました。
物理と化学の融合
より小さいものがより精細に見えると、いろいろな材料の構造がわかってきます。すると分子の中で原子がどのように機能しているかも把握できるようになります。その結果、新たなデバイスを設計する上で必要な、分子の中にある電子が光に応答して動くメカニズムがより詳しくわかるようになってきました。
これはいかにも物理の分野のように見えますが、原子や電子の動きがわかるということは、例えば病気になった時の細胞がどうなっているかがはっきり見えるということです。これまで視細胞のような複雑な機能の仕組みや、パルスレーザーによる細胞のイメージング、また植物の光合成の解明などに活用されてきた歴史があり、化学との融合分野として発展してきました。
仕組みがわかれば世界は変わる
さらに研究は発展し、フェムト秒をはるかに超える100京分の1秒にあたるアト秒のレーザー光も実現しています。そこからさまざまな材料の仕組みがさらに解明できれば、例えば太陽電池の性能向上や軽量化が実現できるでしょう。もし窓ガラスに使える透明な太陽電池を安価に開発できれば、私たちの生活も一変するでしょう。
有機物を分解する化学反応のメカニズムが完全に解明されれば、光触媒についても改良の指針が立つでしょう。そうなればCO₂を光で還元した燃料が開発され、地球温暖化の解決に道筋が見える可能性もあります。レーザーが未来の人類を救う鍵となる重要な基礎研究のひとつであることは、間違いありません。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 光システムコース 教授 古部 昭広 先生
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