「巨大ブラックホール」の周辺を探る方法とは?
銀河に存在する巨大ブラックホール
最近の研究から、私たちの地球がある天の川銀河の中心には、太陽の400万倍ほどの重さの巨大なブラックホールが潜んでいると考えられています。また、天の川銀河だけでなく、どの銀河の中心にも、巨大ブラックホールが普遍的に存在すると考えられるようになってきました。銀河の中心近くの星は、ブラックホールの強力な重力に引っ張られ、ものすごいスピードで回っていて、その速度と位置からブラックホールの重力が計算できます。1990年代からの赤外線を使った技術の発達によって、星の速さと位置を正確に観測できるようになり、巨大な質量のブラックホールの存在がわかってきたのです。
遠く離れたブラックホールを観測するには
これらの巨大ブラックホールの周りで、実際に何が起きているのか。それを探るには、地球から見えるブラックホール周辺はあまりにも小さすぎて、10m口径の望遠鏡を使っても、直接写真を撮ることはできません。そこで、2つ以上の望遠鏡を離れたところに置いて、異なる望遠鏡からの光を重ねて干渉縞(かんしょうじま:光が干渉して強め合ったり弱め合ったりすることでできる明暗の縞模様)を作り、この干渉縞を観測してその模様の強さと位置を分析します。すると、望遠鏡どうしの距離とあたかも同じ口径の望遠鏡で観測したような効果が得られます。現在、この干渉計といわれる装置でブラックホール周辺の観測が行われています。
基本的な物理を宇宙物理学に活用
こうした干渉計を使ったブラックホールの観測方法は、実は高校の物理で習う「ヤングの二重スリット実験」を応用したものです。望遠鏡の光で干渉縞を作るには、2つの光の進む距離をぴったり揃えることが必要で、そのためにさまざまな装置を動かします。宇宙物理学の現場では、高校で学ぶ単純な物理を土台にし、そこにハードウェアやソフトウェアの技術力を結集させて観測し、推測したことを論理的に確かめていきます。こうして、ブラックホールの実態の解明への取り組みが続けられているのです。
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先生情報 / 大学情報
京都産業大学 理学部 宇宙物理・気象学科 教授 岸本 真 先生
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