肺がんの発見から予測まで 医師の診断をサポートするAI技術の開発
コンピュータでもれなく探す
CT、MRIなどの医用画像撮影装置は、身体を傷つけずに内部の状態を見ることができ、診断や治療に大きな役割を果たしています。特に、日本人の最大の死因である「がん」を早期に発見するためには、撮影した画像(医用画像)から病気の疑いのある場所を精度よく見つけることが欠かせません。医用画像を1枚1枚丁寧に読み解き医師が診断することを「読影」と言います。日々の検査によって得られる医用画像は膨大な枚数になります。医師の読影を支援するために、大規模な画像データ(ビックデータ)に対する人工知能(artificial intelligence: AI)技術の開発に期待が高まっています。
CT画像から肺がんを見つける
胸部の撮影にはX線写真やCT、PET/CTが使用されます。日本では肺がんによって年間約7万6千人が亡くなっています。肺がんの早期発見、早期治療は、多くの人の命を救うことはもちろん、生存者のQOL(生活の質)を上げることにもつながります。
これまでに、画像処理技術と医学的知識の両方を駆使して、病変の可能性のある箇所を検出することが可能になっています。ビックデータからAIが直接、がんのパターンを学習し、医師と同等もしくはそれ以上の精度を達成する期待が高まっています。さらに、良性か悪性かの判断と、悪性の場合の病気の進行度の予測を精度よく行うために、医用画像から多数の定量的な特徴を網羅的に解析するラジオミクスや画像と遺伝情報を統合解析するラジオゲノミクスにAIを活用する研究も進んでいます。
未来の発病を予測する
ビックデータから得る定量的な情報に遺伝子などの情報も組み込むことで、コンピュータの仮想空間にデジタル複製した一人ひとりの肺のデジタルツインを創る可能性が秘められています。この技術を使って、その人の肺が将来どのように変化し、肺がんの出現の可能性やタイミングの予測も可能になるでしょう。実現すれば、人類の健康寿命を延ばすことにつながることが期待されます。
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