積乱雲は地球の大気を動かすエンジン
積乱雲は特別な雲
空には、乱層雲や高積雲、巻雲など、さまざまな雲が浮かんでいますが、中でも、入道雲とも呼ばれる「積乱雲」は特別な雲です。地球の大気は重力にとらわれているので、そもそも空気は、わずかにしか上下方向に動くことができません。しかし、積乱雲は、雲の中でも唯一、鉛直方向(縦方向)に激しい運動をするのが特徴です。積乱雲の直径は、数キロメートルから十キロメートルくらいあり、雲の中は強い上昇気流が吹いていて、地表にたまっている水蒸気を上空まで持ち上げます。つまり積乱雲は、地表の水蒸気をかき集めて、空高く持ち上げるポンプのような役割を果たしているのです。
天気を変化させる積乱雲
積乱雲は、地表の暖かい空気が上空で冷やされ、水蒸気が水滴や氷の粒になり、さらにそれらが集まることで形作られています。雲の中で氷の粒がぶつかり合うことで、静電気が起こって雷を発生させたり、地上に霰(あられ)や雹(ひょう)、雨を降らせたりします。
積乱雲はひとつだけで浮かんでいるのではなく、集まって巨大化し、それによって大気にさまざまな影響を与えます。最も組織的に積乱雲が集団になったものが台風です。その大きさは、直径1000キロ以上に達することもあります。台風だけでなく、大雨や強風、高温、極端な乾燥といった異常気象も積乱雲に関係しています。天気をダイナミックに変動させているのは、積乱雲と言っても過言ではありません。積乱雲は地表の水蒸気を空に持ち上げるポンプであると同時に、地球全体の大気を動かすエンジンでもあるのです。
複雑な自然現象を解明する面白さ
天気を変化させる積乱雲ですが、実はその実態はまだわからないことが数多くあります。どれくらいのスピードで雲粒子が集まり、雲ができて発達するのかもよくわかっていません。自然現象は多様かつ複雑で、いま人間が理解しているのはごく一部に過ぎないのです。それらを解明することに、「気象学」の面白さがあるのです。
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