コメが世界を救う! ~生産性向上をめざしてコメの品種改良に挑む~
コメのハイブリッド品種とは?
野菜は、販売されている種子のほとんどがF1品種(一代雑種品種)になっており、農家でも種子を採取せずにF1種子を購入して植えることが一般的になっています。F1品種とは、両親の良いところを併せ持った品種を作るための究極の育種法を利用した品種です。縁の遠いもの同士を交雑して品種を作ると両親より強くて立派に育つのです。この技術を利用して寒さや病気に強く、しかも収量が多いハイブリッドなコメを作る研究が進んでいます。ハイブリッド品種の強勢は一代限りなので、コピー製品を作れないという権利面の利点もあります。
両性花が雌花になる分子メカニズムを利用
イネは1つの花の中に雄しべと雌しべがある両性花で、雄しべの花粉が同じ花の雌しべに付いて受粉する「自家受粉」でコメ粒を作ります。雄しべが花粉を作るときに重要な役割を果たすのがミトコンドリアです。細胞の中で核とミトコンドリアの相性が悪いと花粉が死んでしまい、花粉がなくなると雌花になります。この分子メカニズムを利用して花粉のないイネを作り、別の系統のイネの花粉を受粉させれば、ハイブリッドなイネができるのです。
中国では収量を増やすことを目的にハイブリッド品種の栽培が主流になっています。日本にも「みつひかり」という品種があり、一般品種より30%ほど多く収穫できるのですが、イネの総栽培面積の0.1%しか栽培されていません。コメが余っている状況もあり、なかなか広がらないのです。
世界の食糧不足を救うために
アジアやアフリカの多くの国では食糧難が続いています。人口増加も予想され、食糧不足は今後も重要な課題になるでしょう。コメは世界人口の約50%の人が主食としており、品種改良による生産性向上は、こうした食糧問題の解決に貢献できると注目されています。国内で増え続ける休耕田などを利用してハイブリッド品種の種もみを作り、海外に輸出することで世界の食糧不足に応えられるため、イネの遺伝子研究への期待が高まっています。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 農学部 生物生産科学科 教授 鳥山 欽哉 先生
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