危険な化学物質を特定せよ! 食の安全から健康を守る
レギュラトリーサイエンスとは?
飲み水や大気には、さまざまな有害な化学物質が紛れ込んでおり、法律で基準値を決めて規制する必要があります。どのような物質がどのくらいの量で人間の健康を害するかを突き止めて、法律づくりに役立てる研究を「レギュラトリーサイエンス」と言います。
レギュラトリーサイエンスの一つとして、今社会問題になっている「有機フッ素化合物」の研究に関心が集まっています。生活の身近な製品に使われてきましたが、健康リスクとの関係が指摘され、科学的知見の収集が進められています。有機フッ素化合物は数千種類以上あり、規制すべき種類や、害になる濃度の特定が急がれています。
化学物質が細胞の中の受容体に誤って結合する?
体の中に入ってきた化学物質は、細胞の「核内受容体」と呼ばれる受容体タンパク質と結び付くことがあります。核内受容体はヒトでは48種類存在し、種類ごとに結合するホルモン、ビタミンなど特定の物質が決まっており、それらは「リガンド」と呼ばれます。
リガンドが受容体に結び付くと、その情報によって核内のDNAからRNAへと転写され、特定のタンパク質が合成されるなど、細胞の反応が起こります。しかし、リガンドに似た構造を持つ化学物質が体の中で核内受容体に結合すると、受容体を介した情報が遮断されたり強化されたりして、健康に影響を及ぼしてしまうのです。
シミュレーションとバイオ実験で有害物質を特定
有害物質を特定する手法に、コンピュータ・シミュレーションがあります。受容体タンパク質の構造をコンピュータ上で再現して、結び付きやすい構造を持つ化学物質を推定します。形状から推測したり、受容体と結合する時のエネルギー値を計算して、値の低く結合しやすいものを探し出したりします。その後、実際に細胞や動物で実験して、その種類や害が出る濃度の特定を行います。
有機フッ素化合物のほかにも、海産物から検出される臭素系ダイオキシンの研究も進んでいます。このような研究が、安全・安心な社会の維持に貢献しているのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 農学部 食生命科学科 准教授 平野 将司 先生
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食品衛生学、環境毒性学先生が目指すSDGs
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