肌をみずみずしく保つには? 年齢に負けない「生理活性物質」を探せ

肌をみずみずしく保つには? 年齢に負けない「生理活性物質」を探せ

新しい生理活性物質を探す

「生理活性物質」とは、私たちの体の生命活動を維持したり調節したりするのに役立つ化学物質です。その中でも、抗がん活性や抗カビ活性、アンチエイジングなどの機能がある生理活性物質は、医薬品や化粧品につながるものとして探索・研究が進められています。
その一つが、肌のうるおいに不可欠な「ヒアルロン酸」を増やす生理活性物質の探索です。

ヒアルロン酸を増やしたい

人の肌には外側にある表皮の下に真皮と呼ばれる層があります。真皮を支えているのがコラーゲンやエラスチンというタンパク質で、それらの間に存在するのがヒアルロン酸です。ヒアルロン酸は2種類の糖が交互につながった鎖状の化合物で、スプーン一杯のヒアルロン酸でバケツ一杯分の水を保持できるほどの保水力があります。このおかげで真皮に水分が十分に保たれて、肌にうるおいやハリ、弾力性が生まれるのです。ところが、ヒアルロン酸は40歳を超える頃から徐々に減少していきます。
そこで、ヒアルロン酸の合成酵素の遺伝子発現を増やすような働きのあるものがないか、300種近い生薬が調べられました。すると、細胞に与えると「合成酵素の遺伝子発現およびヒアルロン酸量を増加する」2種が見つかりました。より効果の高い1種の成分を抽出した結果、オイデスモ―ルという物質に生理活性があることが突き止められました。

創傷治癒も期待できる優れもの

このオイデスモールは、65歳を超える年齢の方から取得した皮膚の細胞でもヒアルロン酸を増やすことができるため、高齢になってからでも肌をみずみずしく若返らせることが可能であることが期待できます。また、皮膚についた傷が跡として残るのは、表皮ではなく真皮が傷ついた場合で、その際に細胞の足場になるヒアルロン酸が傷の治りを早めると考えられています。オイデスモールは、真皮でヒアルロン酸を作っている合成酵素の発現を誘導してヒアルロン酸を増やすことができるため、創傷治癒効果が期待できます。培養細胞レベルでは、既にその効果も確認されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神奈川工科大学 工学部 応用化学生物学科 教授 飯田 泰広 先生

神奈川工科大学 工学部 応用化学生物学科 教授 飯田 泰広 先生

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化粧品科学、分子生物学、薬理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究の面白さは、わからないことを自分で追求していくところにあります。何か自分の興味のあることを深く掘り下げてみてください。例えば私は水泳部だったので、筋肉のつけ方や泳ぎ方への興味から解糖系やクエン酸回路などの生物で習う代謝や、物理で習う力の作用や力積などを自分で調べたことによって楽しいと思うようになりました。1つのことを深く理解しようとすると、疑問点がいっぱい出てきて、さまざまな学問が必要になります。学問でのつながりが見えてきて楽しめるとともに、後に研究を遂行するための素地ができると思います。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神奈川工科大学に関心を持ったあなたは

神奈川工科大学は、「学生本位主義」を掲げ、みなさん一人ひとりの成長を何よりも大切にしています。ここでは、実践的な学びを通して、社会で本当に役立つ「力」と「自信」を育てる教育を行っています。
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