ニセモノを見つける技術を医療へ応用?
薬が効きやすい体質かどうかを知る
抗がん剤(がんの薬)を服用した場合、すべての患者に効果があるというわけではありません。体質によって、効き方に差があります。そこで、医療現場では患者の体質を知ることが重要になってきます。これは遺伝子診断によって可能ですが、費用や検査にかかる時間、正確さが課題となるため、短時間でしかも正確に検査する技術が研究されています。実はこの技術の元となっているのは、偽のブランド米を発見するための技術です。従来は米一粒一粒を取り出して遺伝子配列を調べていましたが、最近の技術では、たくさんの量の米を一度に調べることができます。
ブランド米に他品種の米が混ざってないか判定する
偽ブランド米には、本物のブランド米に、2割程度の他品種を混ぜているのです。そのため、米の偽物判定では、ブランド米に異なる品種の米が入っていないかを検査する必要があります。検査は次のような方法で行われます。米のサンプルの中に、ある酵素を入れて反応させます。この酵素は他品種の特定のDNAを切る性質があります。本物のブランド米のDNAにはない、他品種のDNAの特徴を利用しているので、容易に偽ブランド米を見つけだしてくれるのです。そして、DNAが切れる反応を起こすときに光を発します。その光の強さで他品種が混ざっている割合を知ることができるのです。光ですぐに本物か偽物かを判断できるのが、この技術の特色なのです。
医療への応用で治療が効率的になる
この技術を応用し、現在抗がん剤に効きやすいかどうかを判定する検査方法が開発されています。この方法の特色は、短時間でしかも正確に判定できることです。しかも、患者は病気の進行によって遺伝子が変化していきますが、複数の遺伝子が混ざった割合まで判定できるため、まだ発病には至っていないが、発病の可能性のある患者を判定することができます。この技術が確立すれば、より的確な薬の投与方法を提供できるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 工学部 物質科学工学科 教授 後藤 雅宏 先生
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