私たちの医療を助けるコンピュータシミュレーション
骨は環境によって変形する
子どもの顔は必ずしも両親の顔を足して2で割ったものになるとは限りません。なぜなら、骨には力の加わり方によって形を変える機能が備わっており、育った環境によって形に違いが生じるためです。このため、目・鼻・口などのパーツの位置や個数は共通していても、骨の形によって決まる輪郭はその子特有のものになるのです。機械工学の世界で開発されたコンピュータシミュレーションを使うと、骨の運動や骨に加わる力の分布を解析することができます。こうした研究を通じて、整形外科疾患に対して患者さん一人ひとりにあわせたテーラーメイド(オーダーメイド)の診断治療の実現が期待されます。
顎関節症の診断を正確に
骨や関節の異常を原因とする疾患のひとつに顎関節症があります。人間が口を開けるときは、耳の近くにある顎関節が回転しながら前に動きます。しかし顎関節症の患者さんは回転する途中で、がくんと関節が外れるような動きをします。そこで頭蓋骨と下顎骨の運動をモーションキャプチャと呼ばれる技術で計測し、コンピュータ画面上で再現したところ、患者さんと健康な人では顎関節の軌跡や速度のピークに違いがあることがわかりました。顎運動に関してこのような数値的な根拠があれば、より正確で客観的な診断ができます。
医師の判断を助けるシミュレーション
コンピュータシミュレーションは手術方法を考えるときにも応用可能です。たとえば側弯(そくわん)症という背骨が曲がってしまう疾患は、神経や内臓に悪影響を及ぼすことがあるため、症状が深刻な場合にはスクリューなどの金属部品を背骨に埋め込む手術をします。しかし、その手術はとても大きなものとなるため、できるだけ簡便化する技術が求められています。側弯症に対しても、コンピュータシミュレーションや3Dプリンターで作成した模型を使うことにより、固定方法やスクリューを埋め込む場所の工夫などの新しい手術方法を考えることができ、実際に患者さんを手術する前に「お試し」することも可能となるのです。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科 バイオエンジニアリングコース 教授 小関 道彦 先生
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先生への質問
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