つらさを乗り越えてリハビリテーションに向き合うには

つらさを乗り越えてリハビリテーションに向き合うには

積極的な取り組み

リハビリテーションは、体を動かすことによって健康な状態に近づける医学的な手法です。病気やけがによって日常生活に支障をきたす場合、リハビリテーションへの積極的な取り組みが元の生活を取り戻す可能性を高めます。しかし、その意義は理解できていても、実際にはリハビリテーションに積極的に取り組まれていないこともあります。

2つの理由

理由のひとつは身体的なつらさです。重い病気やけがにより思うように体が動かない場合、そのつらさからリハビリテーションへの取り組みはためらわれがちです。さらに、現在の療法は理学療法士が患者の運動機能の状態に合わせて選択するものであり、病気の根本原因に対処する概念は浸透していません。例えば、立ち上がると急激に血圧が低下する起立性低血圧を併せ持つ患者に対して、運動機能の改善だけに焦点を当てると、起立性低血圧特有の症状によりリハビリテーションが困難になる場合があります。リハビリテーションでも病気の根本原因に対処する手法が必要であり、研究が進められています。
また、体は動くけれど気持が向かないという心理的原因の排除も重要です。理学療法士は患者の意欲を高めるために動機づけを行っていますが、方法がマニュアル化されていません。そこで、経験豊富な理学療法士を対象に調査を行い、患者自身にもどのような動機づけが意欲を高めたかを調べて、動機づけを体系化する研究も行われています。

健康長寿社会のために

健康長寿社会は、単に長寿であるだけでなく、健康で活動的な老後をめざすものです。一方で、実際は体が動くのにもかかわらず家に引きこもり、その結果、健康寿命を縮めてしまう人も存在します。動かないことで健康状態が悪化することを「廃用症候群」といい、これを防ぐことが健康長寿社会実現の大きな鍵です。廃用症候群はまだ広く知られていないため、今後は理学療法士が情報発信を通じた啓発を行い、積極的なリハビリテーションに導くことが期待されています。

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信州大学 医学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 小宅 一彰 先生

信州大学 医学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 小宅 一彰 先生

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リハビリテーション、理学療法学

メッセージ

大学では、どのように社会貢献できるかを学びながら、社会に必要なスキルを身につけられます。そのため、進学先を選ぶ際は、自身が社会にどう貢献したいかのビジョンを持つことが重要です。理学療法分野に所属する学生の中には、過去にけがをした経験から入学を決めたという人がいますが、理学療法の大きな目標は単にけがの治療ではなく、社会全体の健康水準の向上です。入学してからの学問のギャップを防ぐためにも、自分が考える社会貢献とめざす学問の意義を照らし合わせて、進学先を決めましょう。

信州大学に関心を持ったあなたは

信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。