食べるだけではもったいない? きのこの力で循環型社会に貢献!

食べるだけではもったいない? きのこの力で循環型社会に貢献!

きのこの力で物質を作りかえる

シイタケやマイタケなど、普段の生活では食材として知られる「きのこ」ですが、食べ物としておいしいだけではなく、さまざまな可能性を秘めています。きのこはほかの生物にはない酵素を持っており、特定の物質を分解して異なる物質に作り変えることができます。また、きのこの菌糸が物質を固める能力を用いて、農林水産業で使用された後の木材、穀物、海藻などのバイオマスを加工することができます。そんなきのこの能力に着目し、バイオマス資源を有効活用するための研究が進められています。

付加価値の高いものから段階的に作り出す

きのこの力でバイオマスを有効利用するためには、付加価値の高いものから段階的に作りかえる「多段階利用」というコンセプトをもとに、研究を進めていくことが必要不可欠です。例えば、健康食品や医薬品などに使用される成分は付加価値が高いため、多段階利用の第一歩として、そういった成分を作り出すための研究が行われています。
例えば、廃棄される予定だったオガクズやフスマなどのバイオマスを用いてきのこを培養し、きのこが作る酵素を抽出します。シイタケが作る酵素で昆布を分解すると、特定のオリゴ糖を作り出せることが研究でわかっています。このオリゴ糖は免疫機能を活性化させる物質であり、健康食品などに活用が期待されています。

残った資源もきのこの力で再活用

付加価値の高い物質を作り出したら、それで終わりではありません。きのこの培養で使用し終えたオガクズなどのバイオマスは、きのこの菌糸を用いて固め、加工することができます。梱包(こんぽう)材やブランドバッグの素材として実用化されているものがあるほか、化学的な反応を使えば、化粧品、自動車の部品、大人用おむつなどにも使われるセルロースナノファイバーという繊維が作成できます。このように、きのこの力で廃棄物も無駄なく有効活用することで、資源を段階的に利用し、循環型社会に貢献することができるのです。

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宇都宮大学 農学部 応用生命化学科 准教授 金野 尚武 先生

宇都宮大学 農学部 応用生命化学科 准教授 金野 尚武 先生

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メッセージ

あなたが環境問題の解決に貢献したいと思っているなら、まずは身近なところに目を向けてみてください。普段何気なく使っているブラスチックは何からできているのでしょうか。そのほとんどが化石燃料を原料にして作られていることを知ったら、どうすればCO₂を削減できるのだろうかといったように、日ごろから考えてみることが大切です。
何をどうすれば社会や環境をより良くできるのかを考える習慣がつくと、課題解決に必要なアイデアを思いつけるようになります。

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