医療現場におけるVRの活用! バーチャル帰宅も可能に?
VRを医療現場で活用する
VR(バーチャルリアリティ)技術を使って仮想世界に没入し、よりリアルにゲームや動画を楽しめる時代になりました。このVRを医療の現場で活用するための研究が始まっています。例えば認知症の患者さんにVRの世界を体験してもらい、脳に刺激を与えることで記憶力の回復につなげられないか、などの研究です。VRの利用だけでは認知症の根本的な治療にはなりませんが、徘徊(はいかい)や興奮など認知症の周辺症状と呼ばれる問題行動を抑えられるのではないかと考えられています。
入院中でもバーチャル帰宅
一方、VRで患者さんに癒やしを与えられないか、という研究も進められています。特に外出に制限がある長期入院中の患者さんは、VRで病院外の風景を見て楽しむことで孤独や不安を和らげると考えられているのです。VRで海外旅行気分を味わってもらうこともできますが、患者さんに聞き取り調査をすると、自宅内部の様子や入院前によく出かけていた場所を見たい、という希望が多くあがりました。また、登山が趣味だという患者さんが、入院中でもVRで山歩きをしている気分を味わいたい、という声も聞かれました。それぞれの希望に沿う体験がVRでできれば、患者さんの心の持ちようが大きく変わる可能性があります。
リハビリもゲーム感覚で
VRの活用で、精神面での効果の次に期待されるのがリハビリテーションや機能訓練の最適化です。いつも同じ訓練室で繰り返し同じ動作をするリハビリでは、患者さんがモチベーションを保ち続けるのは困難です。VRで仮想世界に入り込み、楽しく取り組めるなら意欲も高まるはずです。ほかにも義手や義足を必要としている人が手や足を動かす感覚を仮想世界でトレーニングしたり、脳に損傷を負った高次脳機能障害の人たちが脳の認知力を高める練習をしたりするなど、さまざまな活用が考えられます。患者さんが入院やリハビリといった状況を前向きにとらえるきっかけの一つとして、医療現場におけるVRの活用は大いに期待されているのです。
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帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生
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