講義No.11273 医療技術

医療現場におけるVRの活用! バーチャル帰宅も可能に?

医療現場におけるVRの活用! バーチャル帰宅も可能に?

VRを医療現場で活用する

VR(バーチャルリアリティ)技術を使って仮想世界に没入し、よりリアルにゲームや動画を楽しめる時代になりました。このVRを医療の現場で活用するための研究が始まっています。例えば認知症の患者さんにVRの世界を体験してもらい、脳に刺激を与えることで記憶力の回復につなげられないか、などの研究です。VRの利用だけでは認知症の根本的な治療にはなりませんが、徘徊(はいかい)や興奮など認知症の周辺症状と呼ばれる問題行動を抑えられるのではないかと考えられています。

入院中でもバーチャル帰宅

一方、VRで患者さんに癒やしを与えられないか、という研究も進められています。特に外出に制限がある長期入院中の患者さんは、VRで病院外の風景を見て楽しむことで孤独や不安を和らげると考えられているのです。VRで海外旅行気分を味わってもらうこともできますが、患者さんに聞き取り調査をすると、自宅内部の様子や入院前によく出かけていた場所を見たい、という希望が多くあがりました。また、登山が趣味だという患者さんが、入院中でもVRで山歩きをしている気分を味わいたい、という声も聞かれました。それぞれの希望に沿う体験がVRでできれば、患者さんの心の持ちようが大きく変わる可能性があります。

リハビリもゲーム感覚で

VRの活用で、精神面での効果の次に期待されるのがリハビリテーションや機能訓練の最適化です。いつも同じ訓練室で繰り返し同じ動作をするリハビリでは、患者さんがモチベーションを保ち続けるのは困難です。VRで仮想世界に入り込み、楽しく取り組めるなら意欲も高まるはずです。ほかにも義手や義足を必要としている人が手や足を動かす感覚を仮想世界でトレーニングしたり、脳に損傷を負った高次脳機能障害の人たちが脳の認知力を高める練習をしたりするなど、さまざまな活用が考えられます。患者さんが入院やリハビリといった状況を前向きにとらえるきっかけの一つとして、医療現場におけるVRの活用は大いに期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生

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作業療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが将来、作業療法士をはじめ医療者をめざすのであれば、学生時代にボランティアやサークル活動などさまざまな経験をしてほしいと思います。それは人に興味・関心のある人が医療者には向いているからで、人が何に困っているのか理解できる人ほど長く続けられる仕事だからです。
一方、よく理系の人がめざす分野だと思われがちですが、患者さんとのやりとりなどでは国語力が必要です。実際に文系の人も多く活躍していますから、理系・文系にとらわれずめざしてほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 福岡キャンパスは有明海に面した雄大な自然と最新設備が揃ったキャンパスです。理学療法、作業療法、看護、診療放射線、医療技術(救急救命・臨床工学)の5学科を擁する福岡医療技術学部では、現代の高度な医療に欠かせない知識や技術に加え、患者さんや他職種のスタッフへの想像力やコミュニケーション能力といったチーム医療に必要とされる素養を高めながら、大牟田市という歴史ある土地で官民一体となり、各自治体と連携しながらさまざまな取り組みを実施していくことで医療のプロとして地域に貢献できる人材を育成します。