脳はいったいどうやって成長するのか?
神経科学とは
できあがった脳の中で、どこにどんな神経細胞(ニューロン)があるのかを調べる神経解剖学、神経細胞がどのように働いているのかを調べる神経生理学といった学問が100年ほど前から始まっています。それらの学問は、さらに「脳はいったいどのようにできあがって来るのだろうか?」という点に拡大してきました。それが神経科学という学問です。ヒトの成人では体全体で数十兆個、脳内の細胞だけも1000億から1兆個程度という非常に膨大な数の細胞にまで成長するといわれています。神経科学では、この膨大な数の細胞の中から、機能、役割を持った細胞に絞って研究を行っています。
例えば、脳を構成する細胞は、ニューロンと、神経膠細胞(しんけいこうさいぼう:グリア細胞)に分類され、神経管の内側の脳室帯に存在する未分化な神経幹細胞が増殖・分化することにより産生されてきます。こういった幹細胞(幹細胞は、細胞分裂を経ても同じ分化能を維持する細胞)から、どのようにしていろいろな種類の細胞ができあがってくるのか?という点について、遺伝子レベル、細胞レベルで研究を行っているのです。
ニューロンは成人でも生まれている
スペインの神経解剖学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハール(ノーベル生理学・医学賞を受賞)以後長い間、脳の細胞は大人になってからは増えず失われていくだけとされていました。しかし、アメリカで放射性同位元素によって細胞の増加を可視化する技術が生まれ、1960年代、成長したラットの脳で細胞増加が報告されましたが、この報告はしばらく取り上げられることはありませんでした。しかしその後、1980年代にカナリアの雄が生殖シーズンに新しい歌を学習する時、脳の特定部位でニューロンが新しく生まれてくることが確認され、引き続き猿を使った実験で確認を行いました。そして90年代の後半にがん患者の皆さんのボランティアによりヒトの脳の中でも海馬の中で新しいニューロンの誕生が確認されたのです。
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