ズッキーニは環境汚染解消のスーパースター!?
動物の酵素を植物に導入
動物は体内にいろいろな分解酵素をたくさん持っています。その一つ、肝臓の中にある「シトクロムP450モノオキシゲナーゼ」には、体内に取り込まれた化学物質を分解する働きがあります。肝臓がさまざまな毒を解毒できるのは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼを持っているためです。では、本来なら動物だけが持っているこの解毒酵素を、植物に導入すればどうなるでしょうか。酵素はアミノ酸を元に構成されています。ですから、その遺伝子を取り出して植物に導入すれば、植物の中で同じ酵素を作り出すことができるのです。
植物は根から汚染物質を吸い集めて濃縮する
植物は地中に張った根から養分を吸収しています。したがって、根を張っている土壌に汚染物質があれば、それも根から吸収するのです。吸収された汚染物質は、通常は植物の中にどんどんためこまれていきます。ということは、もしその植物に、動物由来の分解酵素シトクロムP450モノオキシゲナーゼが導入されていれば、汚染物質は次々と分解されていくことになります。動物の分解酵素を植物に導入することで、汚染を浄化する「植物マシン」を作り出すことができるのです。
ズッキーニが最も強力な浄化植物?
シトクロムP450モノオキシゲナーゼは、どの植物に導入しても同じような機能を発揮するのでしょうか。タバコ、イネ、バレイショ(じゃがいも)などで試したところいずれも大丈夫でした。ただし汚染物質の吸収力については、植物によって差があります。最も吸収力が強い植物を探っていくと、ウリ科植物であることがわかりました。ウリ科の中でもズッキーニが最強です。
そこで今、なぜウリ科の吸収力が強いのか、それはどういうメカニズムによるものなのかを解明する研究が進められています。この研究が進めば、動物の分解酵素を取り入れたズッキーニが、環境汚染問題を解消するスーパー浄化植物となる可能性があるのです。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
神戸大学 農学部 生命機能科学科 応⽤機能⽣物学コース 准教授 乾 秀之 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
環境農学、遺伝子工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?