講義No.10316 薬学 化学

抗がん剤が効かなくなるメカニズムを突きとめろ!

抗がん剤が効かなくなるメカニズムを突きとめろ!

抗がん剤が効かなくなるメカニズムを突きとめろ!

「薬剤耐性」という言葉を聞いたことがあるでしょう。ある病気に対し、それまで効いていた薬が効かなくなる現象です。抗がん剤にもしばしばこの現象が起こります。薬はなぜ効かなくなるのでしょうか?
「薬剤耐性」のメカニズムを知るには、薬が体内でどのような働きをするか、それによってがん細胞がどのように反応するかを、細胞の分子レベル、遺伝子レベルで解明する必要があります。

分子や遺伝子に原因があることも

例えば、がん細胞は投与された抗がん剤を排出するタンパク質を細胞内で増加させ、排出を活発にして薬剤の濃度を下げ、薬が効かないようにすることがあります。また、がん細胞には、増殖のスイッチであるEGFRに遺伝子変異を起こしてスイッチがオンになりっぱなしになったタンパク質を持つものがあり、それにはEGFRを標的とした薬が効きます。しかし、EGFRがさらに変異することで、それまでの抗がん剤が効かなくなることもあります。がん自身も生き残りをかけて、さまざまに変化しているのです。
そのメカニズムがわかれば、薬が効くようにする方法を見つけられる可能性が広がります。事実、遺伝子変異を起こしたEGFRのスイッチが入らないようにする薬が開発され大活躍しています。

遺伝子変異を見つけて、個別化医療を

もちろん、すべての人が同じメカニズムでがんになるのではありません。EGFRとは別の遺伝子変異が起こって、がんになる人もいます。その場合は、そのメカニズムに合った抗がん剤が必要になります。現在、一度に数百種類の遺伝子変異を発見できる検査が始まっていて、それぞれに最も有効な抗がん剤を選択する道が開かれつつあります。それを「個別化医療」といいます。しかし、まだまだ解明できていないメカニズムが沢山あることもわかっています。
未知のメカニズムに取り組み、それを解明することができれば、新しい薬の開発につながり、がんの診断や治療の進歩に貢献できます。薬学研究は、その大事な一翼を担う重要な学問なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

明治薬科大学 薬学部 分析化学研究室 准教授 鈴木 俊宏 先生

明治薬科大学 薬学部 分析化学研究室 准教授 鈴木 俊宏 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

薬学、分析化学、臨床分析学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今、やりたいことが見つかっていなくても焦ることはありません。自分の好きなことは何かを考え、それを現実に近づけることが出来れば、きっとやりたいことが見えてきます。小さい頃からの夢を実現する人もいますが、やりたいことは変わってもいいのです。
私の研究は、がんに薬が効かなくなるのはなぜかという興味から始まり、抗がん剤の基礎研究へとつながっています。薬学は薬剤師だけではなく、薬を作る人、病気の研究をする人などさまざまな道に進めます。理系の学部選びに悩んでいるなら、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

明治薬科大学に関心を持ったあなたは

建学の精神:薬学の普及と社会に有用な薬剤師を養成し、医薬分業を実施し、もって国民の保健衛生へ貢献する。大学の理念:ソフィア(純粋知)とフロネシス(実践知)を兼備えた人材を育成する。大学の教育目標:1.薬物治療に責任を持てる薬剤師を養成する。2.強い探究心と洞察力を持つ、独創的発想力豊かな人材を育成する。3.柔らかな心と豊かな人間性を持った国際的に通用する薬学人を育成する。オープンキャンパス・進学説明会等のイベントは中止となる可能性もありますので、最新情報は本学HPをご確認下さい。