抗がん剤が効かなくなるメカニズムを突きとめろ!
抗がん剤が効かなくなるメカニズムを突きとめろ!
「薬剤耐性」という言葉を聞いたことがあるでしょう。ある病気に対し、それまで効いていた薬が効かなくなる現象です。抗がん剤にもしばしばこの現象が起こります。薬はなぜ効かなくなるのでしょうか?
「薬剤耐性」のメカニズムを知るには、薬が体内でどのような働きをするか、それによってがん細胞がどのように反応するかを、細胞の分子レベル、遺伝子レベルで解明する必要があります。
分子や遺伝子に原因があることも
例えば、がん細胞は投与された抗がん剤を排出するタンパク質を細胞内で増加させ、排出を活発にして薬剤の濃度を下げ、薬が効かないようにすることがあります。また、がん細胞には、増殖のスイッチであるEGFRに遺伝子変異を起こしてスイッチがオンになりっぱなしになったタンパク質を持つものがあり、それにはEGFRを標的とした薬が効きます。しかし、EGFRがさらに変異することで、それまでの抗がん剤が効かなくなることもあります。がん自身も生き残りをかけて、さまざまに変化しているのです。
そのメカニズムがわかれば、薬が効くようにする方法を見つけられる可能性が広がります。事実、遺伝子変異を起こしたEGFRのスイッチが入らないようにする薬が開発され大活躍しています。
遺伝子変異を見つけて、個別化医療を
もちろん、すべての人が同じメカニズムでがんになるのではありません。EGFRとは別の遺伝子変異が起こって、がんになる人もいます。その場合は、そのメカニズムに合った抗がん剤が必要になります。現在、一度に数百種類の遺伝子変異を発見できる検査が始まっていて、それぞれに最も有効な抗がん剤を選択する道が開かれつつあります。それを「個別化医療」といいます。しかし、まだまだ解明できていないメカニズムが沢山あることもわかっています。
未知のメカニズムに取り組み、それを解明することができれば、新しい薬の開発につながり、がんの診断や治療の進歩に貢献できます。薬学研究は、その大事な一翼を担う重要な学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
明治薬科大学 薬学部 分析化学研究室 准教授 鈴木 俊宏 先生
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