体を酸化から守る脂質「プラスマローゲン」で老化を防ぐ
「酸化」は酸素を取り込む生物の宿命
酸素は化学反応を起こしやすく、簡単にほかの物質と結びついて酸化、変質させます。人間をはじめ、酸素を細胞内に取り込むことでエネルギーをつくって生きている動物や細菌は、常に酸素に触れているため、酸化のダメージから逃れられません。このダメージが蓄積することが、アルツハイマー病や動脈硬化など老化の一因と言われています。また、慢性腎臓病やアトピー性皮膚炎にも、酸化ストレスが関わっています。この酸化を防ぐ物質として、最近、注目されているのが「プラスマローゲン」という脂質(油)です。
自らを酸化させることで酸化から守る
プラスマローゲンは細胞膜の中に組み込まれているリン脂質の一種で、体内で合成されますが、肉や海産物など食事からも摂取しています。このプラスマローゲンの分子には「ビニルエーテル結合」という部分があり、そこが酸素と結びつきやすい、つまり酸化されやすい構造を持っています。そして、脳など酸素消費量の多い臓器や、皮膚など酸素に触れる場所の細胞に、特に多く存在することがわかっています。こうしたことから、プラスマローゲンは自らを酸化させることで、周りの物質を酸化から守る働きがあると考えられています。
プラスマローゲンをサプリで増やす
現在、体内のプラスマローゲンを増やす抗酸化サプリメントの研究が進んでいます。酸化して壊れやすいため、カプセルなどに閉じ込める方法や、摂取後に体内でプラスマローゲンに変わる、似たような分子構造を持つリン脂質を使う方法などが検討されています。
これまで、ビタミンなどさまざまな抗酸化物質が研究されていますが、プラスマローゲンは体内でも合成されている抗酸化物質であるという点で、画期的なものです。このサプリメントが実用化できれば、アルツハイマー病など酸化が関わる病気のリスクを抑えることができます。また、動物にも応用できるので、慢性腎臓病の多い猫のためのサプリメントにも応用できる可能性があります。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 動物科学科(令和7年度から農学部 動物科学・水産科学科 動物科学コース所属) 教授 西向 めぐみ 先生
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