微生物を活用して社会の課題を解決する
人間が知っている微生物は1%にも満たない
わずか1グラムの土には少なくとも100万種以上、多くて100億種以上の微生物がいると考えられています。その中で私たち人間が実際に発見して、名前や性質が判明している微生物は約5000種類です。99%以上の微生物はまったく知られていません。微生物の存在が発見されたのは1674年のことですが、地球上には未知の微生物がまだまだ存在しているのです。日本人は古くから発酵菌と上手に付き合って、発酵食品を発展させてきました。この経験からより多くの有益な微生物を見つけて、社会の役に立てる研究が進められています。
あらゆる自然の中に潜んでいる微生物
ノーベル医学・生理学賞を受賞した北里大学の大村智博士は、医薬品の元になる物質を生み出す微生物を、静岡県のゴルフ場の土から採取しました。有益な微生物は各地の土壌に普通に生存しているのです。沖縄県の西表(いりおもて)島にあるマングローブや八重山諸島など、豊かな自然が残る地には多様な微生物が数多く生存しています。アフリカのチュニジアにあるサハラ砂漠や塩湖からも、その土地独自の微生物を採取可能です。
薬の原料や有害物質の分解など、可能性は無限大
微生物はいろいろなものを食べて、分解し排泄をします。そのときに出す成分で、医薬品、農薬、化粧品になるものもあります。沖縄の洞窟にすむコウモリのふんから、抗がん剤の成分を作る菌が発見されたことがあります。また、環境に有害な物質を分解してくれる環境浄化のための微生物も存在します。例えば、生物由来で環境に優しいバイオディーゼルは、製造後にグリセリンを多く排出しますが、このグリセリンを食べてくれる微生物もいるのです。さらに、その微生物を培養して農薬を作ることができれば一石二鳥といえるでしょう。
バイオマス(生物資源)やバイオテクノロジーを活用して経済成長をめざす考え方をバイオエコノミーと呼びます。SDGs(持続可能な開発目標)が提唱される現在、産業微生物には大きな可能性が秘められています。
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先生情報 / 大学情報
東京工科大学 応用生物学部 地球環境コース 教授 松井 徹 先生
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応用微生物学先生が目指すSDGs
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