難病の子どもたちを「臨床研究」で救おう! ~すばらしき小児医療~
子どもの難病と治療
子どもに起こる「全身型若年性特発性関節炎」は原因不明の難病で、高熱と関節の腫れ・痛みを来たします。かつて治療薬は「ステロイド」のみでした。ステロイドには副作用があり、特に子どもは身長が伸びなくなる、骨が弱くなることが問題です。ステロイドが効かない患者さんは、副作用に悩まされていました。そこで新薬「トシリズマブ」が開発されました。新薬により、多くの患者さんはステロイドをやめ、元気に過ごせるようになりました。しかし一部、トシリズマブが効かない患者さんがいます。関節の痛みやステロイドの副作用が残っており、重要な課題です。それらの課題は「臨床研究」で解決します。
臨床研究って?
研究は「基礎研究」と「臨床研究」に分けられます。基礎研究はマウスや細胞を用いて実験室で行なう研究です。臨床研究は患者データを用いて病院で行なう研究です。新型コロナウイルス感染症を例に挙げると、軽症と重症の患者さんに分け、どこが違うか検討します。すると肥満、高血圧など重症に関わる因子がわかるのです。トシリズマブが効かない全身型若年性特発性関節炎の患者さんを予測する因子を調べるため、臨床研究が行なわれ、トシリズマブが効く群と効かない群に分けて比較し、効かない群ではIL-6という血液中の炎症物質が高いことがわかりました。この研究から、血液中のIL-6が高い患者さんは早期にほかの薬剤への変更を考えた方がよい、という事がわかったのです。
すばらしき小児医療
子どもは成長します。大きさだけでなく、どんどん能力を獲得していくのです。成人は病気にかかると、すでに獲得した能力、つまり生活や働くための能力が落ちてしまいます。落ち方をゆっくりにしたり、少し戻したりするのが成人医療です。一方で、子どもは病気の治療をしながら、成長を支えます。ひとりの人間の成長を支え、見守ることができるのは小児科医ならではの喜びです。あなたにも小児医療のすばらしさを知ってほしいです。子どもの難病の研究を行なう仲間を待っています。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 医学部 医学科 助教 西村 謙一 先生
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