既存の試薬や医薬品から新しい薬を調製し患者さんを救う院内製剤
市販薬で対応できない患者さんのための院内製剤
薬剤師とは、処方せんによる調剤や薬の相談に応じる仕事だと思っているかもしれませんが、実はそれだけではありません。大きな病院の9割以上で、市販薬を独自に調製する「院内製剤」を薬剤師が作っています。これは、患者さんの症状や状態に合う薬がないときに製剤設計して院内限定で使用する薬のことです。
例えば、口から飲み込めない患者さん用に錠剤の薬を注射や坐薬に変える、試薬を用いて新たな効果を有する軟膏(なんこう)にする、小児に適した剤形に調製するなど、要望は多岐にわたります。市販薬では効果がない、対応できないといった状態に応じて治療に役立てているのです。
優れた院内製剤の市販化も
院内製剤は、医薬品を液体や軟膏といった状態にしたり、数種類の試薬を混ぜたりして作られます。薬学的、物理化学的な知識や技術をもつ薬剤師だからできる手法です。抗がん剤に使われる薬には輸液に調製されるものも多く、なかには良性腫瘍を軟膏で治すものもあります。多様化する医療と患者さんの個別のニーズに応える院内製剤には、使用頻度が高いものや効果的なものもあり、そこから市販化された医薬品もたくさんあります。
市販化には、製剤学に基づいた製薬設計、安全性や有効性の研究と検証、国の承認も必要です。薬剤の特性を把握し、より使いやすく安全な製剤方法を探るため、大学と医薬品メーカーとの共同開発も行われています。
チーム医療や在宅医療でニーズが高まる薬剤師
院内製剤には、チーム医療が不可欠です。医師と相談しながら製剤するのはもちろん、投与後の状態を把握して柔軟に対応する力も問われます。
特に近年は、緩和治療への対応や在宅医療での薬剤師の役割も注目されています。なかでも在宅医療において、高齢者を中心とした患者さんの薬の使用状況や効果を把握することが大切になっています。困っている患者さんの必要に合わせて対応でき、チーム医療で連携して医薬品情報などを提供できる薬剤師が求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
岐阜医療科学大学 大学院保健医療学研究科/薬学部 薬学科 教授 重山 昌人 先生
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