血管にとって、コレステロールは悪者?

血管にとって、コレステロールは悪者?

モナ・リザは、動脈硬化だった?

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた肖像画『モナ・リザ』の顔を見ると、まぶた近くに黄色いふくらみがあります。これは動脈硬化によって起きる眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)だと考えられます。動脈硬化は、血管の壁にコレステロールや細胞の死骸などがたまって、血管がどんどん狭くなる病気です。進行すると血管が詰まって心臓の一部分が壊死する心筋梗塞(こうそく)や、壁からはがれた固まりが脳の血管に流れて詰まる脳梗塞を起こします。栄養たっぷりの食事を取り続けると動脈硬化になることから、肖像画のモデルも栄養豊富な食事を取っていたと推測できます。

運ぶ「悪玉」と、回収する「善玉」のバトル!

動脈硬化は自覚症状がないので、脂質の一種であるコレステロールが血中にどのくらいあるかを目安にします。コレステロールは体の細胞やホルモンを構成する大切な材料・エネルギーにもなります。コレステロールはLDL(悪玉)によって体の各組織に利用されるために運ばれて、反対に余ったものはHDL (善玉)によって全身から回収されて肝臓に戻されます。LDLとHDLはコレステロールの乗り物です。悪玉のLDLが多いと血管に蓄積するのです。現在、悪玉LDLを減らす薬はありますが、効果は限定的でしかありません。そこで、善玉HDLを増やす方法が考えられますが、この薬を開発するのが難しいのです。

「量より質」の発想で、薬を創る

HDLの量を増やすためには、体の中でHDLをたくさん作らせる方法が考えられます。からだにはHDLを作るABCA1というタンパク質があるのですが、ABCA1を増やす薬は副作用が強く、今のところ実際に使うのは難しいのです。次に考えられるのが、HDLの働きを活発にして、より強力に回収できるようにする方法です。その鍵となるのが、HDLの表面に結合しているタンパク質です。HDLを増やすというやり方ではなく、HDL自体の機能を高めて薬として活用しようという研究が進んでいます。

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大阪医科薬科大学 薬学部 薬学科 衛生化学研究室 教授 奥平 桂一郎 先生

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高校時代は、好奇心を持って、いろいろなことにアンテナを張り、新しいことにチャレンジしてみましょう。「リスクを取りたくない」とか「コスパが良くない」とかいった結果や損得を考えずに、ある種の「ばか」になってみてください。やってみないと何も始まらないし、チャレンジが何かを生み出す力になるからです。
もう一方で、1つのことに打ち込むことも大事です。どれも適当にやるのではなくて、広く興味を持って、1つのことにひっかかったら、さらに突っ込んでいくような姿勢を大切にしてください。

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