同じ間違いをくり返さないための教育 算数や数学をどう教えるか
傾向別の振り返りが大切
平成31年度の小学校の学力調査で、「6+0.5×2」という正答率約60%の問題がありました。足し算から計算してしまう計算順の間違いが多かったものの、分析をすると間違い方にもいくつかパターンがあることがわかりました。間違いの傾向別に授業で振り返りをすれば、同じ誤答を防ぐための対策につながります。
例えば「0.5×2」を「5×2」のように計算してしまった子がいた場合、必要なのは計算順の指導ではなく、小数を含むかけ算の問題についての指導です。教師は生徒ひとりひとりの傾向を把握し、限られた授業時間の中で効果的な振り返りをすることが求められます。
速さの公式と感覚のズレ
算数や数学はただ公式を教え込むのではなく、身の回りの現象や体験と結びつけることも大切です。例えば速さの計算方法は、教科書に載っている「距離÷時間=速さ」という公式を教えます。しかし、身の回りで「速さ」というと、時速や分速ではなく、100メートル走で誰が一番先にゴールするかなど、目に見える速さのことをイメージするでしょう。このとき脳内では、100メートル走のタイムを距離で割ったものを速さとして認識しています。このように、日常における速さと算数における速さでは分母と分子が逆転してしまうので、感覚のズレが生じがちです。教師がこの前提をわかっていると、子どもたちにわかりやすい教え方を模索でき、算数をより身近に感じてもらえます。
なぜ難しい問題を解くのか
高校入試の数学を分析すると、まれに正答率1%の問題があります。極端に正答率の低い問題は本当に必要なのでしょうか。難しい問題には、数学的な思考力がどの程度身についているのか見極める目的があります。そのため授業でも難問を扱い、正解にたどり着くまでの手段や、筋道を自ら考え選択する力を養う機会をつくることが大切なのです。算数や数学には必ず正解があるため、「学び方そのものを学ぶ」ためにも適した教科だといえます。
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共栄大学 教育学部 教育学科 教授 島内 啓介 先生
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