平行線が存在しない世界 探究することで頭を鍛える教材の開発
三角形の内角の和が180度を超える?
例えば、盛岡から東京まで最短距離で行くためには、まっすぐ進むルートを取らなければなりません。しかしこの「まっすぐ」は、地球の外から見るとまっすぐではありません。盛岡から東京までの最短距離は、盛岡、東京と地球の中心を通る平面で地球を切ったときの切り口になります。この切り口(「大円」)を「まっすぐ」な直線として扱い、球面上の図形を考える数学が球面幾何学です。球面幾何学では、これまで中学・高校で習ってきた図形の常識とはかけ離れたことが起こります。例えば、球面上の直線は大円の弧であるため、平行線は存在しません。また、地球の経度が0度の線、経度が90度の線と赤道で作られる三角形を考えると、内角の和は270度となり180度を超えてしまいます。
非ユークリッド幾何学を学んでみよう
学校で学習する幾何学を「ユークリッド幾何学」と呼ぶのに対し、球面幾何学は「非ユークリッド幾何学」と呼びます。この非ユークリッド幾何学を用いて高校の新教科である、理数探究基礎・理数探究で取り組める教材の開発が進められています。現在、高校の理数探究で扱われている数学のテーマはあまり多くありません。非ユークリッド幾何学なら、例えば球面上での三角形の合同や、球面上の作図の方法など、数学学習のソフトウェアを使えばコンピュータ上でビジュアル的に実験をすることが可能です。数学学習ソフトウェアの「GeoGebra」は誰もが開発に参加できるオープンソースのソフトウェアなので、高校生が使いやすい機能を自分で付け加えることができます。
探究することで学力アップ
開発した教材を使って実際に高校で授業を行い、アンケートをとって授業の効果や生徒の関心を調べたところ、数学に対して苦手意識を持っている生徒も、非ユークリッド幾何学には興味をもってくれることがわかりました。
受験勉強だけではなく、興味を持てることに取り組んで学力が向上すれば理想的であり、それをめざした教材開発が進められています。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 ソフトウェア情報学科 データ・数理科学コース 准教授 田村 篤史 先生
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