学校に「行けない理由」ではなく、「行ける理由」に注目しよう!
「引力」と「斥力」
不登校について考える時、「なぜ学校に行けないのか」に着目するのが一般的です。子どもを学校から遠ざける力(これを「斥力(せきりょく)」と言います)を検討し、それを減らすよう対応しようとします。
不登校の割合は、小学生で千人中約4人、中学生では百人中約3人です。少し視点を変えると、千人中996人の小学生、百人中97人の中学生は、登校できているのです。この子どもたちはどうして不登校にならずに学校に通えているのでしょうか? それは、子どもを学校に結びつける力、「引力」が働いているからと考えられます。
学校と子どものつながり
この引力を「スクール・コネクテッドネス」と言い、これが高い子どもは問題行動も少なく登校状況も良好です。
中学生のスクール・コネクテッドネスは、所属、規範、教師、友人、部活動の5つの因子からなっています。所属は「学校やクラスの居心地の良さ」を示し、規範は「勉強することは大切だ」のように社会のルールを自分の中に取り込んだものを表しています。そして教師、友人、部活動もそれぞれが学校とのつながりを示すものです。スクール・コネクテッドネスを測定してみると、その子どもが何によって学校と結びついているのかわかります。
不登校の改善のために
遅刻や早退が多く気になる生徒の場合、スクール・コネクテッドネスの中の高い因子に注目し、それを維持させることで、不登校を未然に防ぐことができます。また、全く学校に行けない不登校の場合には、その生徒が大事だと感じている因子に焦点をあて、学校とのつながりを再構築していきます。
「斥力」を見ていくと、どうしても後ろ向きになって「何がいけないか」「誰のせいか」と悪者・犯人探しをしがちです。一方、「引力」から見ると、「何によって学校とつながっているか」「何があったから登校できたか」と、良いところを自然に探すようになります。学校に「行けない理由」ではなく、「行ける理由」に注目することで、不登校の支援はポジティブで前向きなものに変わっていきます。
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先生情報 / 大学情報
吉備国際大学 心理学部 心理学科 教授 津川 秀夫 先生
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