警備ロボットはどうして自在に動き回れるのか
人とともに働くロボット
ロボットが人間に混ざって働く時代が、既に始まっています。大規模なオフィスビルや空港などでは、警備員が巡回する代わりに自動走行型の警備ロボットが動き回り、施設内の異常を検知しています。施設の中をぐるぐると走行しているのは、一見すると単純な仕事に思えるかもしれません。しかし、自分のいる場所を把握しながら、障害物や歩いてくる人をよけて、エレベーターに乗って階を移動しなくてはならないのです。それを、いちいち教えるのではなく、ロボット自身が考えて動くように開発されています。
レーザーで周囲をスキャン
現在、活躍している警備ロボットの一つは、動きながら絶えずレーザーを使ったセンサで周りの形をスキャンしています。1回に約7万点の光を発射して、光が当たった対象物までの距離を感知して3次元の地形を把握し、次に進んだ場所でも同様の操作を行います。これにより、3次元の2枚の絵ができるので、それを瞬時に絵合わせすることで相対的な移動量を計算し、現在の位置を推定するのです。しかし、実際には人が歩いてきたり、風で木が揺れたりするなどのノイズが入り、ぴったりと絵合わせできるわけではありません。そこで、AIがノイズの形を学習しています。人と判別できれば、絵合わせの際に排除することも、走行中によけることも可能です。
ベイズ推定を用いる
ノイズの処理を加えても移動しているので、レーザーで捉えた2枚の絵が完全に一致することはありません。そのためロボットは、「ベイズ推定」という技術を用いて確率的にもっともらしい絵合わせを行い、移動量を計算しています。この計算自体は非常に簡単な四則演算ですが、ロボットは1秒間に何十万回もの計算を行いながら動作しているのです。
ロボットは単純な作業を飽きずに継続し、汚く危険な場所でも嫌がりません。ロボットの働きにより、人間の安全が確保され、労働負荷も軽減される未来が訪れることが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
明治大学 理工学部 機械工学科 教授 黒田 洋司 先生
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