脳の治療を自動で制御! 数学やシステム開発で医療現場に貢献
低温療法に求められる自動化
脳が損傷を受けたとき、治療では打撲などと同じように患部を冷やします。これを脳の低温療法といい、脳細胞などへのダメージを食い止めることが目的です。この低温療法は特に救急医療の現場に普及していますが、医療従事者が数十分おきに脳の温度を確認し、必要に応じて機械を操作して適切な温度を保たなければなりません。もし温度管理を自動化できれば、医療従事者の負担や医療コストを軽減できます。また、常にコンピュータで監視をして温度を管理した方が人力よりも精度が高いため、治療効果の向上が見込めます。
自動制御で医療現場の負担を減らす
さらに温度だけでなく、脳の圧力や血流量などをチェックし、患者の状態に合わせて適切に保つための自動制御システムも研究が進められています。脳の圧力を変えるときは、血液中の浸透圧を変える薬を投与します。浸透圧が変わると水分の動き方が変化し、脳から余分な水を引き抜くことが可能です。その結果、脳内の圧力を調整できます。
血流量を変えるときは、血液中の二酸化炭素濃度を変える方法が試されています。血管は二酸化炭素濃度が下がると収縮し、濃度が上がると拡張する特性があるからです。しかし血流量はまだ正確に機械で測定できていないため、医師の経験に頼っていた部分を可視化しなければなりません。自動制御を実現するためにも正確な測定方法の研究や、圧力と血流量の効果的なバランスの分析などが進められています。
柔軟な数学モデルが必要
脳の生理状態を自動制御システムに把握させるためには、数学のモデルが必要です。モデルを作るときは微分積分、連立方程式など高校までで習う数学の知識も使われています。しかし脳はとても複雑な仕組みのため数式が膨大な量になり、条件が変わると解けなくなる場合があります。これを発散といい、解が無限大になってしまうのです。病気になると脳の状況は随時変化するため、柔軟性のある数学モデルの研究が求められています。
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東海大学 工学部 医工学科 准教授 檮木 智彦 先生
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