多様な考えや価値観を持った人が共に生きるために
多様化した社会に生きる
人はそれぞれ異なる考えや価値観を持っています。同じ地域に住む同い年の同級生でさえ考え方は違うのですから、より大きな社会、さらに世界に視野を広げれば、人種、宗教、国籍などの違いによって考え方の差は広がるばかりです。では、これらの人々が協働して社会を営むためには、どのような原理やルールが必要なのでしょうか?
共通する価値、異なる解釈
人にはそれぞれどうしても譲れない価値があります。一番重要な価値は「生命」、また、自らの意思に従って行動できる「自由」もきわめて大切な価値です。人間には等しい価値があるという「平等」、良い生き方の規範となる「美徳」、最低限の暮らしを保障する「福祉」も必要な価値でしょう。忘れてはならないのが「平和」の価値です。これらの価値は誰もが大切だと思えるものですが、それぞれの価値をどう解釈するかは人によって違います。また、優先順位も違うでしょう。
たとえば、生命を尊重することに異論のある人はいないでしょう。しかし、生命の尊重が何を意味するかについては解釈が分かれます。すべての生命は平等に扱い、それぞれの重みを「1」と数えるのが尊重なのか。それとも、生命はかけがえのないものであるから、「モノ」のように数えないことが尊重なのか。それによって、5人を救うために1人を犠牲にすることは正しいか、といった問題に対する答えが変わります。
多様化そのものに価値がある
自分とは違う他者を「面倒くさい奴」と思いがちです。しかし、自分とは違う他者は、自分が見逃していたものや、自分が感じてこなかった痛みに気づかせてくれます。私たちの認識や感性を広げてくれます。その意味で多様性にはそれ自体価値があります。
多様な考えや価値観を持った人々と協働して生きるための原理やルール、それが正義です。正義の根底には、異質な他者を「話のわからない奴」として排除しない、他者に理解できない自分だけの「神様」に祈らない、自分の意見を変えることを恐れない、という民主主義の精神があります。
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北星学園大学 経済学部 経済法学科 教授 岩本 一郎 先生
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