講義No.03845 法学

皆さんが裁判官になる!?

皆さんが裁判官になる!?

日本の裁判員制度とは

これまで裁判所は、私たちにとって縁遠い存在だったのではないでしょうか。何が行われているかよくわからないというのが実情だったと思います。そもそも、司法制度は、国民の信頼・理解に支えられなければ成り立ちません。そこで、司法制度改革の目玉の1つとして、平成21年5月に国民が裁判員として裁判に参加する「裁判員制度」が導入されました。
国民が裁判に参加すると言うと、アメリカやイギリスの「陪審員制度」を思い浮かべる人も多いでしょう。フランスやドイツには「参審員制度」もあります。これらの国と日本では、国民が裁判に関与する形態が異なります。日本の裁判員制度は、1.何が起こったのか(事実認定)、2.いかなる刑罰を科すのか(量刑)の双方を国民が裁判官と一緒になって判断するのが特徴です。

選ばれるのは、どんな人?

裁判員が扱う事件は地方裁判所で行われる一定の刑事事件です。重大事件という認識でよいでしょう。裁判員に選ばれるのは20歳以上の成人です。70歳以上の人は辞退できますが、意欲的な人々も少なく、国民全体で制度を支えています。
裁判員は、都道府県ごとに衆議院選挙名簿にもとづく候補者名簿の中から選ばれます。事件ごとに70~130人の候補者が無作為に選出され、裁判官との面談などの諸手続を経て、午後からはじまる裁判を担当する者として、最終的に6名の裁判員(+補充裁判員数名)が法廷に臨みます。

裁判員制度の今後

事件に関心を持ち、裁判員の経験を通じて司法制度を理解することは大切です。しかし一方で、死刑などの量刑に関わった裁判員の心理面のケアや、守秘義務の範囲の明確化など、制度の課題も見えてきました。裁判員は報道などのイメージに左右されて事実認定や量刑を行うのではなく、証拠に基づいて判断することが求められます。今後はその土台づくりとして、学校教育の現場で、未来の裁判員である子どもたちに制度内容や期待される役割などを伝えることが重要になるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 法学部  教授 宮木 康博 先生

名古屋大学 法学部 教授 宮木 康博 先生

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刑法、刑事訴訟法、刑事政策

メッセージ

私は子どもの頃から推理小説が好きだったので、刑事訴訟法を専門に選びました。学ぶうちに、真相を究明することの困難さ、すなわち、人を裁くことの難しさを感じるようになりました。
刑事事件だけでなく、私たちの日常生活は、たくさんの法律と関係しています。例えば、何気ないコンビニでの買い物は、立派な「売買契約」です。法学を学ぶことは、社会の仕組みを学ぶことにほかなりません。身近な疑問をきっかけに法律を学んでみてはいかがでしょうか。きっと、興味のあるテーマに出会えると思います。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。