日本で、SNSに実名や自分の顔写真を使わないのはなぜ?
プライバシー懸念
日本のSNSユーザーは、欧米に比べてアカウントに実名や自分の顔写真を使わない傾向があります。インターネットに自分の個人情報をさらすことに抵抗を感じる=「プライバシー懸念が高い」要因のひとつに、日本社会の「関係流動性」の低さが挙げられます。日本は古い人間関係から離れられず、新たな関係性をつくりにくい社会なのです。反対に、欧米は対人関係を形成する選択肢が多く、見ず知らずの他者を信頼するスキルが養われます。しかし日本のように「関係流動性が低い」社会では新たな対人関係を形成する必要がないため、知らない人を信頼しにくく、他人に個人情報が渡ることにも強い警戒心が働くのです。
社会の関係流動性
日本の関係流動性が低い要因は、社会構造に求めることができます。日本は「稲作文化圏」の国であり、水田で米をつくるためには、周囲の人と水や農道、道具を共有し、力を合わせる必要があるため、必然的に緊密なコミュニティが形成されます。また、台風や地震の多い日本の気候風土もコミュニティの結束を強め、結果的に関係流動性を下げています。調査の結果、中国や韓国、台湾といった東アジアの稲作文化圏の国々、モロッコやチュニジアといった砂漠の厳しい環境下にある北アフリカの国々でも、インターネット上に個人情報を公開しない傾向があることがわかっています。
文化的価値観を明らかにする
心理学には、SNSを含むインターネット上のコミュニケーション、対人関係のあり方を研究する「インターネット心理学」という分野があります。また、その背景にある国や地域ごとの価値観をつかむためには、「比較文化心理学」の知識も用いられます。TwitterやFacebook、Instagram、TikTokなど今後も形を変えていくであろうSNSにおいて、コミュニケーションのあり方やその背景にある文化的価値観を学術的に明らかにすることは、今後のグローバル社会を考えるうえでも大きな意義があるといえるでしょう。
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北星学園大学 文学部 英文学科 講師 ロバート J. トムソン 先生
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