文化は誰がどう語るのか 変化しつつある国際政治と文化の関係
国際政治と文化
今日の国際政治や国際関係は、国家間の関係性だけを見ていても理解しづらくなっています。SNSやテクノロジーの発達によって人々が情報を発信することも容易になり、その情報が瞬時に広まるようになりました。こうした世の中では、例えばある個人や政策が熱狂的に支持され、あるいは批判されるといったことが起こりやすく、人々が自覚なしに政治に深く関与しているといえます。そんな現代では、人々の営みや価値観が生み出す「文化」のあり方にも、政治が色濃く影響するようになっています。
文化を語るストーリー
ユーラシア大陸を横断するシルクロードは、東西文化の交流に大きく貢献したことから、中国、カザフスタンなどにある関連遺跡が世界遺産に認定されています。多くの国や地域でその魅力や価値がさまざまに語られ、研究されてきました。その一方で、世界遺産に認定されたことで特定の国同士に利害関係が生まれていることも事実です。つまり過去にできた遺産が現代の国家間の政治的な問題として紛糾しているのです。しかし、これほど規模の大きな文化について、たった1つの視点だけで語ることは本来難しいはずです。それぞれに立場や価値観が異なる人たちの視点や語りを認め合い、「シェア」することができれば、文化遺産は複数のストーリーが埋め込まれた、より豊かなものになるといえます。
差異に着目する
文化遺産を例にとっても、国や地域によって人々は異なる考え方=「差異」を持っていることがわかります。国際関係論という学問は、政策提案に結びつく研究も数多く行っていますが、政治と文化が密接に関係しあって生まれる差異に対してセンシティブに向き合い、これまで構築してきた理論や知識を使って、その差異が生まれる過程や原因について考える学問でもあります。国際関係論を学ぶことは、政治の分野だけでなく、世界に生きる市民の一員として、「差異」を理解し認め合うための複数の物差しを持つことにもつながるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
金沢大学 人間社会学域 国際学類 教授 中野 涼子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
国際関係論先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?