「幸せ」の定義は人それぞれ みんなが幸せになるためには?
福祉という言葉のイメージ
福祉とは、障害者、高齢者、生活困窮者のような「(社会的)弱者を助けるもの」だと思っている人は多いでしょう。目の前で困っている人を助けることは大切ですが、それだけでは本質的な解決にはなりません。「障害のある人やお年寄りはなぜ生活する上で困難さを抱えるのか」「貧困であることはその人の努力不足なのか」、根本原因を考え、人々の考え方や社会の認識を変えていくこと、そして社会の仕組みを修正していくことも、社会福祉の重要な課題です。社会の仕組みが変われば、その人は(社会的)弱者ではなくなるかもしれないのです。
個人の幸せと社会の幸せの両立
そもそも社会福祉は、介護や支援を必要とする人だけではなく、社会を構成するすべての人を対象とし、個人と社会の両方にとっていい状態(Well-being、ウェルビーイング)を追求しています。個人にとっての幸せが、社会にとっての幸せとは限りません。また、「幸せ」の定義は人それぞれです。自分とは違う考え方があることを人々が認識することによって、新たな議論が生まれ、社会は発展していきます。最近は、女性の働き方、高齢者雇用、LGBTQIA(性的マイノリティ)、難民の受け入れなど、多くの議論が生まれています。ますます多様性が高まる社会においては、どのような選択をしても、有利不利を生み出さない仕組みが必要です。
価値観に優劣はない
例えば、女性の働き方や高齢者雇用のような議論が、従来の価値観を否定するものになってはいけません。議論の目的は、「性別や年齢に関係なく、働きたい人は働くことができる」という選択肢を示すことであり、家事育児に専念する女性や老後を楽しむ高齢者の選択が望ましくないわけではありません。価値観に優劣を付けてしまうと、結局は画一的になり、多様性の確保・実現からは遠ざかってしまいます。多様な選択肢を提示するとともに、それぞれの価値観を尊重し合える社会を築くことができれば、人と社会の両方にとってwell-beingが促進されていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北星学園大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 伊藤 新一郎 先生
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