本当に公平なの? 「憲法」に見る多数決のあり方

本当に公平なの? 「憲法」に見る多数決のあり方

選挙結果が「みんなの意見」になっていない?

例えば30人学級で1名のクラス委員を選出するとします。クラス全員が3人の立候補者の中から1人を選んで投票しました。そこで最も多い獲得票が13票である場合、過半数の人がいいと思っていない状況で、みんなの意見を反映していると言えるでしょうか。実は多数決といっても、ポイント制で順位をつけるなどいろいろなやり方があります。民主制は「多数決で物事を決めていく」という憲法に定められた仕組みですが、実際の選挙でも小選挙区制や比例代表制などがあり、やり方は1つではありません。憲法では「国民の意見をできるだけ公正で効果的に反映すること」が定められているので、ただ多数決をすればいいのではなく「最も適したやり方」を考える必要があるのです。

「今」だけではない、求められる視点

2021年にドイツで議会が、2050年頃までにCO₂排出量を実質ゼロにするというCO₂削減計画を作成しました。はじめの10年、今の世代に向けての削減量はとても緩やかで、その後に激減させるという計画に対して、ドイツの憲法裁判所が「憲法違反」という判決を下します。そこで注目されたのは、今の人たちは経済や産業を維持しつつ生活できるけれど、将来の人たちが困るだろう、ということです。つまり「将来世代の人権を侵害する」という判断でした。このように物事を決める中で、今いる人の意見だけでなく、将来の人たちの意見まで見据えたような判断も求められるようになってきました。

多数者の意見よりも大切なもの

ドイツの例からもわかるように、すべてを多数決で決められるわけではなく、多数決に適してない事柄もあると考えることが重要です。また多数決で決めることで、少数の人に対するいじめにつながりかねない場合もあります。民主制は、基本的には憲法で枠付けられていますが、多数者によって基本的人権を侵害することはできません。それは、日本の憲法が「個人の尊重」に大きな価値を置いているからです。

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常葉大学 法学部 法律学科 教授 吉崎 暢洋 先生

常葉大学 法学部 法律学科 教授 吉崎 暢洋 先生

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憲法学

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メッセージ

法律は難しいと思っているかもしれません。でも法律を「社会のルール」と考えると、中高生でもほぼ身についていて、難しいのはそれを言葉にすることなのです。例えば、サッカー好きな人でもオフサイドというルールを言葉で説明するのは難しいのと同じです。社会の基本的なルールがわかっていれば、法律の中身はそれほど難しくありません。法律を学ぶと、社会を知ることになり、社会が変化する時には、ルールも変わっていくという視点を持てます。それは社会に生きていく人として必要なことなのです。

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