食べてもカロリーになりにくい、夢のダイエット米、誕生へ! 

食べてもカロリーになりにくい、夢のダイエット米、誕生へ! 

未知なる「でんぷん」の合成メカニズム

芋などにヨウ素液を滴らすと、色が変わる実験を覚えていますか? 「でんぷん」は、多くの人がこの実験で存在を知る、なじみのある物質です。しかし、実はその合成メカニズムに、未知の部分が多い物質です。関係する酵素の半数の働きに関しては解明がされていません。そのメカニズムを解き明かす研究が続けられています。

ユニークな特性を持つ「変異体」

研究は米を材料とし、遺伝子組換えではなく交配によって行われています。酵素の働きを調べる過程で、特定の遺伝子が壊れた状態の変異体を作って実験したところ、独自の特性を持つでんぷんが発見されました。そのひとつがダイエット効果を持つ米です。
一般的な米にも含まれる、消化されにくく、カロリーになりにくい「難消化性でん粉」の量は通常1%ほどですが、この変異体の場合は含有率が約30%と、数十倍にもなります。これにより、カロリー減となるだけでなく、大腸環境を向上させる働きも持つことから、現在、農林水産省のサポートを受け、さらなる研究が進められています。

課題をクリアし商品化へ

一方で、この米には大きな課題もあります。それは炊飯米として食べたときに、おいしくない、ということです。この問題を解消するための調理法や利用法が模索されています。現在最も商品化に近いのが「麺」です。この変異体の米粉を小麦粉に混ぜ、試作品を作ったところ、腰があり、つるつる感のあるおいしい麺であることがわかり、調理特性にも望ましい結果が得られました。ほかにも米菓、ピラフ、グラノーラなど、幅広い利用がめざされていますが、品種登録が完了次第商品化される予定です。
ダイエット効果以外にも、化粧品などに適した角のない丸みを帯びたでんぷんなど、さまざまな特性を持つ変異体も見つかっています。これからの研究でさらにユニークなものも登場するかもしれません。身近でありながら、未知の可能性を秘めた物質「でんぷん」の用途は業界、ジャンルを超え多くの分野への波及が期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

秋田県立大学 生物資源科学部 生物生産科学科 教授 藤田 直子 先生

秋田県立大学 生物資源科学部 生物生産科学科 教授 藤田 直子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

農学、生物資源科学、生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は、米の中で「でんぷん」がどうやって生成されているのかについての研究をしています。その研究の過程で、「変異体」というある特定の遺伝子が壊れているものの中から、ダイエット効果をはじめ、とても面白い特性を持つでんぷんを発見しました。
でんぷんを作ることができるのは、光合成を行う植物と一部の藻類だけです。このように、植物は大きな可能性を秘めています。あなたにも興味を持ってもらえたらうれしく思います。でんぷんについて研究をしたいという人は、秋田県立大学生物資源科学部で一緒に学びませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

秋田県立大学に関心を持ったあなたは

秋田県立大学は、最先端の設備と全国トップクラスの少人数教育体制など、入学から卒業まで着実に成長できる環境が整っています。中でも「学生自主研究制度」は、入学後すぐに研究に取り組める制度です。学生が主役のこの制度は、自ら研究テーマを決定し、指導教員がアドバイスを行い、実験スペースや機材、そして研究資金を交付して学生をバックアップします。秋田県立大学は、新しい知識を得ながら、知的好奇心を満たす無限のフィールド、学生が主役になれる大学です。