磁石の秘密を、電子の研究で解明する!
磁力はどうして発生するのか?
磁石は、なぜ磁力を持つのでしょうか? 極小の世界から見てみましょう。磁石を構成する物質は、原子から成り立っていて、その中に電子という素粒子が存在します。電子はそれぞれが電荷を持った小さな磁石のような存在で、たくさんの電子が同じ向きにそろうと、その物質が磁性(磁力)を持つのです。
現在、スマートフォンやハイブリッドカーなど、電子・通信技術をはじめとする多くの分野で、小型で強力な磁石が必要とされています。どのようにして強力な磁石を作るか、その研究のためには、磁性を発生させる元となる電子の世界を知ることが肝心です。
強力で高温に耐える磁石の研究開発
強力な磁石を作るには、いろいろな方法があります。素材の研究もその一つで、現在最も強力とされているのは、「ネオジム」という金属に鉄とホウ素を混合した磁石で、携帯電話の振動音用バイブレータなどにも使われています。磁石は高温では磁性が消えてしまうことが知られています。自動車などの高熱を帯びる機械に使用される場合は、ある程度の高温でも磁性を維持できる磁石が求められます。
磁性を持つのは、金属だけではありません。放射性元素など、まだまだ物性(物質の性質)の研究があまりされていない物質もあり、低温や高圧の状態でどんな磁性を持つかなどの研究が待たれています。また、ネオジムなどのレアアースは、貴重な資源です。研究が進めば、もっと安価なありふれた元素から強力な磁石を作れる時代が来るかもしれません。
目に見えない「電子の世界」の理論
磁性は電子の向きがそろうことで生まれますが、現在盛んに研究されている「超伝導」でも同じような現象が起こります。電子が一斉に同じ状態になることによって、物質の電気抵抗がゼロになるという超伝導状態が生まれるのです。超伝導も磁性も目に見える現象ですが、その原理は、目に見えない「電子の世界」で成立しています。電子の世界の動きを知るため物性物理学や量子力学の分野で、研究が進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 物理学科 教授 堀田 貴嗣 先生
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