ピンクのダイヤモンドがセンサに 赤く輝く光を追え!

ピンクのダイヤモンドがセンサに 赤く輝く光を追え!

不純物・欠陥インクルージョンがセンサとして働く

天然石としては希少なダイヤモンドですが、実はメタンガスから比較的簡単に作ることができます。極めて珍しいピンクのダイヤモンドを作ることも可能です。ダイヤモンドの炭素の一つを窒素(N)に置き換えてその近傍に空孔(V)を作り、「NVセンター」と呼ばれるペアを形成するとピンク色に輝くのです。このNVセンターに緑色の光を当てると赤い蛍光を発します。この蛍光は磁場と電界、温度によって変化するので、センサとして利用できます。

柔軟に適応できる能力

ダイヤモンドセンサの特徴の一つは、室温大気圧下でも機能することです。例えば医療機器に利用されている「量子干渉計」は、超電導体を使うため極低温に冷やさなければならず、大掛かりな装置を必要とします。しかし常温でも使えるダイヤモンドセンサであれば、小型化でき、モバイル化も可能になります。温度と磁場・電流を同時に計測できることも、ダイヤモンドセンサの特徴です。この特徴は、パワーデバイスの電界集中や温度上昇を防ぐためのセンシングなどに活用の可能性が示されています。
また、NVセンターの数や配置を変えることで、ダイヤモンドセンサの空間分解能を制御できます。分子や細胞といったナノスケールからミリスケールまで、幅広い対象への応用が可能です。

性能の向上と小型化の先に

ダイヤモンドセンサの感度は、ラットの心臓の動きをセンシングできるレベルに達しています。結晶の品質や計測の精度を向上させて感度をさらに上げ、脳細胞や脳神経、さらに脳そのものの生体情報が得られるようになれば、脳科学の新たな扉が開かれ、ブレインマシンインタフェースに展開することも可能になるでしょう。センサのサイズが小型化されれば、その日の体調がわかるピンクのダイヤモンドの指輪が登場するかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

東京工業大学 工学院 電気電子系 教授 波多野 睦子 先生

東京工業大学 工学院 電気電子系 教授 波多野 睦子 先生

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応用物理、電気電子工学、量子科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

20年後、あなたが中堅として社会で活躍する頃、AIはシンギュラリティに達し、量子コンピュータをはじめとする量子技術が社会に実装されていることでしょう。その時代に重要なのは、変化をいとわない創造性や人間力です。本当に興味を持てるところをとがらせて、自分の力を磨いてください。本学は2024年度から東京科学大学になります。東京医科歯科大学との統合で、人体に関する研究のチャンスが広がります。多様性豊かな大学をめざして入試に「女子枠」を設けました。共に未来を開いていきましょう。

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東京工業大学は、1881年の創立以来理工系総合大学として時代を切り拓いてきました。2016年には、大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞するなど世界トップレベルの研究を行う大学として高い評価を受けています。現在、本学は日本初となる学部と大学院を統合した「学院」を設置するなど、大きな改革に取り組んでいます。学生が自らの興味に基づいて体系的に学べるカリキュラムを用意するとともに、全ての人がベストパフォーマンスを発揮できる教育・研究環境を実現して、よりよい未来の創造に貢献する人材を育てます。