「量子」をとらえて物理現象を解析する

「量子」をとらえて物理現象を解析する

量子イメージングとは

物理現象を可視化し情報を得る方法のひとつに「量子イメージング」があります。「量子」とは、X線やガンマ線、中性子線、ベータ線などの粒子のことです。量子イメージングは、これらの量子をセンサで信号としてとらえ、得られたデータを解析することで、物理現象の情報を抽出します。それぞれの量子の性質に適したアプローチで検出し、様々な対象に応用します。例えば、X線やガンマ線は医療や宇宙観測に、中性子を使った組成分析は、自動車の車軸やコンクリートなどの非破壊検査に活用されています。

X線をとらえる半導体検出器

量子イメージングのための計測システムも、量子の性質によって異なります。デジタルカメラやスマートフォンに使われているCMOSイメージセンサは、可視光用の計測システムと言えます。光をとらえて電気信号に変換し、カメラ内のハードウエアで処理してデータ化する装置だからです。
デジタルカメラ用のCMOSセンサの厚さは5~10μm程度です。これでX線を観測しようとしても、X線は可視光より透過力が高いため、この厚さでは透過してしまいます。そこで、センサ部分を厚く作ろうとすると、電気抵抗を高くする必要があります。ところが、抵抗値が高いとセンサの回路を作ることができません。この相反する条件をクリアするために産業界のSilicon-on-Insulator(SOI)という技術を使って、高いX線感度と高度な信号処理を両立するSOI-CMOS検出器が開発されました。

宇宙から人体、物性まで応用が広がる

SOI-CMOS検出器は、様々な用途へ応用が計画されています。宇宙X線観測により、新たなサイエンスが切り拓けるかもしれません。他にも、ガンマ線カメラの医療装置への応用や、ミューオンを使ったリチウム電池の検査など、多彩な研究がなされています。また、計測システムの開発を加速させ、近い将来、1枚のボード上にAIを使った処理搭載することで、可搬型で高度なデータ処理が可能な装置が実現することも期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

宮崎大学 工学部 工学科 応用物理工学プログラム 准教授 武田 彩希 先生

宮崎大学 工学部 工学科 応用物理工学プログラム 准教授 武田 彩希 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

放射線計測工学、量子ビーム科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

いろいろなことに興味をもって、アンテナを張ってピンときたものにチャレンジしてみましょう。私自身、大学の学部・修士課程在学時は、科学館の職員になりたいと思っていました。そのために教育大学に進みましたが、ひょんなことから物理学の研究に携わることになり、今に至ります。まわり道をしたように見えますが、すべての経験が生きているので、その都度興味をもったものにチャレンジしてきてよかったと思っています。これから先、何が起こるかわかりませんが、好奇心と勇気をもって、あなたの道を歩んでいってください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

宮崎大学に関心を持ったあなたは

宮崎大学は、「世界を視野に、地域から始めよう」のスローガンのもと、人的・知的・物的資源を共有し、機能を相補します。(1) 教養教育の一層の充実と質的向上、(2) 教育・研究基盤の強化、(3) 学際領域の教育・研究の強化と創出、(4) 地域および国際社会への貢献、を具体的な目標として、21世紀を展望しつつ、知の創造の殿堂として、活気に溢れ、魅力に満ちた学風と輝くキャンパスを築きます。また、地域と連携して宮崎の文化と風格を高めることを目指しています。