イルカと人間が話せる日は来るのだろうか?
人間と動物は話せるか
人間と動物は話すことができるでしょうか? 例えば動物園や水族館のショーなどでは動物が人間の指示に従いますが、動物側からの意思表示は「反応しない」ということしかありません。そうではなく「今は楽しい気分」「魚が食べたい」といった気持ちや意思を動物側から示してくれるようになれば、どんなに素晴らしいでしょう。現在、学問の世界では動物やヒトの行動を分析する行動分析学の方法論に、認知科学や動物心理学といった知識を組み合わせ、「動物と話す」ことをめざした研究が行われています。
イルカの高い能力
人間と動物が会話をするためには、まず動物がモノの名前を覚えることが必要です。これを「命名」と言います。言葉に関する能力が高いとされる動物に「命名」を教えたところ、チンパンジーはモノを記号(図形文字)で表すことができ、オウムはモノを音で表現できることがわかりました。さらに、イルカは「記号」と「音」の両方でモノを表現できることもわかりました。人間と同様に、イルカも「ペン」という音を聞くか、ペンを意味する記号を見ると、脳裏にペンをイメージし、表現することができるのです。現在は水族館などで飼育されている特定のイルカを対象に、「名詞」や「動詞」を教える訓練が行われています。
知能の進化の解明
イルカは人間と同じように、集団で暮らすことや社会行動をとることが知られています。また、数を理解し、錯覚を起こす点も人間と共通しています。しかし、人間とは系統発生が大きく異なり、また海で暮らすイルカがなぜ人間に近い知能や言葉の能力を獲得したのかはまだ解明されていません。生き物の身体的な進化の過程は、化石やDNAを調べることで解明できますが、知能の進化の過程は形に残らないからです。イルカに言葉を教え、意思疎通を図るという研究は、人間とイルカがより良い関係性を築くだけでなく、動物の知能の進化を解き明かす手掛かりになる可能性もあるのです。
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東海大学 海洋学部 海洋生物学科 教授 村山 司 先生
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