多文化共生、新しい社会変化に応じた法のあり方を考えよう
同性婚の法律問題、欧米と日本の違い
社会変化に応じて法律は変わるべきでしょうか。例えば、同性婚を認めるか否かという性的マイノリティの権利の問題があります。欧米諸国や台湾では、同性婚を法的に認めており、異性婚で得られる税制上の優遇を同性婚カップルも受けられます。しかし、日本では法律上同性婚が認められていません。日本の同性婚を求めるカップルは、異性婚なら受けられる法的権利を享受することはできないのです。
法改正は時間がかかり、困難も多い
これに対して、日本もほかの先進国なみに同性婚を認めるべきだと考える人もいるでしょう。しかし、簡単ではありません。まず権利を享受できていない当事者が裁判に訴え、自分の権利を主張しなければなりません。そして、それを認める裁判所の判断が重要になります。新しく法律をつくったり法律を改正したりするには理由が求められますから、裁判所で人権が制約あるいは侵害されていることが認められなければならないのです。
欧米は日本に先行して、このような過程を経て権利を保障してきました。権利が認められるには社会の共感も必要です。日本では、性的マイノリティに対する意識はまだまだ一般的ではありません。女性に対してもいまだに差別が存在しています。ジェンダー平等の道は遠いです。とはいえ、欧米の先例があるわけですから、法的に同性婚を認め同性カップルに権利を保障することも不可能ではないはずです。
社会変化に目を向けるべき
同性カップルの権利保障については、日本は法律が社会に追いついていないと考えられます。一方で、法律が社会を規定する面もあり、法律が新たに作られたり、改正されたりすれば私たちの社会意識は変化します。そこに携わる法律の専門家の役割はとても重要です。特に、社会がグローバル化するなかで、既存の自国の法律だけで物事を判断することが難しくなっていることにも注目すべきです。法律の専門家も、そうでない人たちも、既存の自国の法律だけにこだわらず、異なる社会、新しい社会変化に目を向けるべきなのです。
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長崎大学 多文化社会学部 多文化社会学科 准教授 河村 有教 先生
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