古い時代の出来事から新しい発見を得て、未来へのヒントに

古い時代の出来事から新しい発見を得て、未来へのヒントに

徳川幕府に大きな影響を与えた「島原の乱」

歴史の授業で、「島原の乱」について学びましたか? 中学・高校では、「キリスト教弾圧によって発生した内戦」「天草四郎を総大将にした大規模な一揆」といった、戦いの概要しか習わないかもしれません。しかし、この内戦の経過を詳細に研究すると、武家社会の矛盾や幕府の政策問題、引いては貿易問題までもが見えてきます。教科書では、半ページにも満たない小さな出来事として扱われていますが、実はその後の幕府の政策に、大きな影響を与える事件だったのです。

戦いを通じて浮き彫りになる江戸幕府の弱点

島原の乱において、農民を中心とする一揆軍は3万数千人だったのに対して、幕府が差し向けた軍勢はのべ12万人以上で、圧倒的な軍事力の差がありました。ところが、最初の討伐軍は1カ月近く手こずったあげく勝てません。
戦国時代末期まで家臣を束ねていた各藩の指導者たちは、江戸時代になってからは、江戸に参勤していたため、藩内には「戦闘のリーダー」が戦闘が始まった時に不在で、寄せ集めの討伐軍は、戦意も戦力も低かったのです。
その後、幕府は江戸の有力老中を島原に向かわせますが、結局、4カ月もの長期戦を強いられたのです。

古い時代の出来事に、未来へのヒントが

キリスト教弾圧が原因と考えられがちな島原の乱ですが、実際には、過剰な年貢に対する農民たちの怒りが、この戦いの直接的な引き金でした。そして、農民たちの軍勢にさえ、幕府軍は大いに手を焼いたのです。この事件を機に、徳川幕府の農民政策は見直され、藩ごとの戦力を管理する方法にも変化が生まれました。キリスト教への警戒感もそれまで以上に高まり、布教を排除するためポルトガルとの交易を禁じます。
このように、史実を掘り下げて研究すると、数多くの新しい発見があります。古い出来事から、新たな発見や、現代社会にもつながる文化の共通点などを見出せる点が、歴史学の最大の魅力と言えるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

長崎大学 多文化社会学部 多文化社会学科 教授 木村 直樹 先生

長崎大学 多文化社会学部 多文化社会学科 教授 木村 直樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

歴史学、政治学

メッセージ

「歴史学」には、2つの役割があります。1つ目は、曖昧な史実を、さまざまな資料を分析することで「確定」に導くこと、2つ目は、その史実にどのような意味があるのかを検証することです。史実に対する解釈は時代とともに変化しますので、歴史学は、常に最新の学問であり続けるわけです。
ひと昔前と比べ、現代はIT技術の進歩で、多くの資料を短時間で集められるようになりました。大量の資料を必要とする研究が、効率的に行えるようになったのです。ますます面白くなっていく歴史学に、あなたもチャレンジしてみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

長崎大学に関心を持ったあなたは

長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。