講義No.01985 法学 政治学

民間では限界がある、公権力の行使

民間では限界がある、公権力の行使

民間委託で、駐車違反は減った?

公権力の行使をともなう行為を、何でも民間に委託すると、さまざまな問題が生じてきます。駐車違反の監視は民間の警備員が行っています。かつては警察官が巡回していましたが、現在は民間に委託しています。罰金を科したり、レッカーで移動するのは、公権力の行使になるので警察が行わなければなりませんが、駐車違反をしている事実を確認することは、民間の人でもできるという考え方です。導入された当初は幹線道路などで厳しく取り締まりが行われたので駐車違反が激減しました。しかしその後、駐車違反を摘発している警備員をあまり見かけなくなりました。それは、警備員に逮捕などの権限がないことをドライバーがわかり、食ってかかる人もいるためだと言われています。警備員も身の危険を犯してまで取り締まりを行っていないのが現状です。しかし、民間委託してから数字の上では、摘発件数は増えています。これは、あまり人通りのない住宅地などで、取り締まりをしているためだと考えられます。

危機管理は、国家の手で

新型インフルエンザが成田空港の飛行機内で見つかった時に、感染している人の近くの座席にいた人が、ホテルに停留されました。これは国家が強制的に個人の権利を制限するもので、違反すると罰金を科せられます。国家が個人の身体を強制的に隔離するのは、戦前では珍しくありませんでしたが、戦後はほとんど例のないことでした。
新型インフルエンザの検疫は、厚生労働省の検疫所が行っています。かつて、この検疫所を民営化しようという議論がありました。これもまた、病気の検査は民間でもできるという発想でした。しかし結局、民営化は見送られました。新型インフルエンザの検疫が、もし民間の手で行われていたら、人々が停留措置に素直に従ったかどうかは疑問が残ります。国家の危機管理に関わる問題は、国家が対処するものだという意識が人々の間に根強く残っているようです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

香川大学 法学部 法学科 教授 三野 靖 先生

香川大学 法学部 法学科 教授 三野 靖 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

メッセージ

最近は、新聞を読まない人が増えています。社会の情報に接することは重要ですが、それ以上に物事を目で見て自分で考えることが大切。インターネットは手段としては使えても、考えるためのベースにはなりません。新聞は紙媒体なので記録として残り、ストックすることで流れを追うことができます。また、関心のない情報も載っているので、興味のない情報も目に入り、知識としていつの間にか吸収できます。広い視野を養うことができ、いろいろな視点から見ることができるようになります。ぜひ新聞を読む習慣を身につけてほしいと思います。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

香川大学に関心を持ったあなたは

香川大学は、「知」が価値を持つ時代、21世紀にふさわしい大学になろうとしています。また、個性と競争力を高めるために「地域に根ざした学生中心の大学」をめざしています。
瀬戸内の温暖な気候と豊かな自然にはぐくまれた香川大学は、6学部8研究科(専門職大学院を含む)を擁し、専門分野のバランスがよい総合大学に発展しており、それらの機能を活かし、創造性豊かな人材を養成します。また、「出口から見た教育の重視」をかかげ、教育の質を向上させ、国際的にも活躍できる人材の養成に努めます。