民間では限界がある、公権力の行使
民間委託で、駐車違反は減った?
公権力の行使をともなう行為を、何でも民間に委託すると、さまざまな問題が生じてきます。駐車違反の監視は民間の警備員が行っています。かつては警察官が巡回していましたが、現在は民間に委託しています。罰金を科したり、レッカーで移動するのは、公権力の行使になるので警察が行わなければなりませんが、駐車違反をしている事実を確認することは、民間の人でもできるという考え方です。導入された当初は幹線道路などで厳しく取り締まりが行われたので駐車違反が激減しました。しかしその後、駐車違反を摘発している警備員をあまり見かけなくなりました。それは、警備員に逮捕などの権限がないことをドライバーがわかり、食ってかかる人もいるためだと言われています。警備員も身の危険を犯してまで取り締まりを行っていないのが現状です。しかし、民間委託してから数字の上では、摘発件数は増えています。これは、あまり人通りのない住宅地などで、取り締まりをしているためだと考えられます。
危機管理は、国家の手で
新型インフルエンザが成田空港の飛行機内で見つかった時に、感染している人の近くの座席にいた人が、ホテルに停留されました。これは国家が強制的に個人の権利を制限するもので、違反すると罰金を科せられます。国家が個人の身体を強制的に隔離するのは、戦前では珍しくありませんでしたが、戦後はほとんど例のないことでした。
新型インフルエンザの検疫は、厚生労働省の検疫所が行っています。かつて、この検疫所を民営化しようという議論がありました。これもまた、病気の検査は民間でもできるという発想でした。しかし結局、民営化は見送られました。新型インフルエンザの検疫が、もし民間の手で行われていたら、人々が停留措置に素直に従ったかどうかは疑問が残ります。国家の危機管理に関わる問題は、国家が対処するものだという意識が人々の間に根強く残っているようです。
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香川大学 法学部 法学科 教授 三野 靖 先生
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