教室の中で「ネゴシエーター」を育成する!
交渉するスキルを学校で学ぶ
文化祭で同じ教室を使いたいと希望するクラスが2つあった場合に、どちらのクラスがその教室を使うのかは話し合いによって決められます。このように、学校生活の中で発生した問題について話し合いをするという活動自体は、今までも日常的に行われてきました。しかし「交渉教育」では、生徒たちにただ話し合いをさせるだけでなく、そこに交渉に関する理論を取り入れ、より良い話し合いの進め方や問題の解決策を探る方法を、日々の実践を通して学んでいきます。
「なぜオレンジが欲しいのか?」を考える
交渉とは、単に自分の意見を押し通すことではありません。お互いの表面的な主張だけでなく、利害や本音にまで目を向けて、問題が解決へと至る道筋を探すことです。例えば、1個しかないオレンジを取り合ってケンカをしている姉弟がいるとします。実は、姉はマーマレードを作る材料として皮だけを必要とし、弟は中の実を食べたがっているのでした。つまり、皮と実で分け合えばお互いに欲しいものが手に入るので、ケンカをする必要はないのです。このように、なぜ欲しいのかという利害に着目することによって、問題が解決に向かうケースは現実社会でも少なくありません。交渉教育には、社会の見え方や社会問題を考える際の視点を身につけるという利点もあるのです。
教育のあり方を見つめ直す
これまでの教育では、何かの知識を覚えたり資料を調べたりするような、学習を進める上で役に立つスキルに重点が置かれてきました。それに対して、交渉教育はさらにもう一歩踏み込んで、大人になって社会に出た時に、あるいは子どものうちからでも使えるような、実際に話し合いを行う中で役に立つスキルの育成を重視しています。そのような意味で、交渉教育は従来の教育の目標を大きく変えるきっかけとなる可能性を秘めています。今ある教育を当たり前のものとしてただ受け止めるのではなく、教育のあり方を考え直し、再構築することにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
埼玉大学 教育学部 社会講座 准教授 小貫 篤 先生
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