講義No.12279 法学

社会の変化と法解釈

社会の変化と法解釈

法律の解釈

法律は、文面を読んでそのまま適用して紛争を解決する、そのように単純なプロセスで運用されることは実は稀です。どの法律でも、解釈という作業が必要になります。第1に、法律に使われている言葉の意味が、字面を見ただけではよく分からないことがあります。そういった言葉は、法律の適用にあたって、何を意味しているのかを解明しなければなりません。また、法律はすべての事柄を網羅するように細かく書かれているわけではありません。そのため、目の前の紛争を解決するのにふさわしいルールが、条文にはっきり書かれていないこともあります。そのときは、解決に導く何らかのルールを、法解釈で導き出す必要があります。大学では、主にこういう法律の解釈について、個別分野の専門家が研究・教育を行っています。

時代に合わせた法律の解釈

法律の解釈にあたっては、条文を作った人の考え方、外国にある同様の条文の解釈などを手がかりにして意味を考えていきます。社会が複雑化された現代では、法律が作られた時には想定されていなかったような紛争も起こります。それでも、法律そのものが現代に通用しなくなることはありません。解釈の余地があるからです。解釈を経て運用することで、法律を社会の変化に柔軟に対応させることが期待できます。

法解釈の担い手

法律の解釈を担うのは、第1に、法律を実際に使う人たち、とくに、法律を紛争に適用してその解決にあたっている裁判官です。裁判官の法解釈で、とくに定着して権威をもったものを、「判例」と呼びます。また、裁判官は、法解釈にあたり、大学の研究者が提唱している学説や、学界での議論の内容を手がかりにすることも多いです。学問としての法律学が、裁判を通じて間接的に、現実社会の紛争解決に役立っているわけです。その意味で、実務と学問が協働して、日々、新たな法解釈を生み出しているといえるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 法学部 法律学科 准教授 溝渕 将章 先生

上智大学 法学部 法律学科 准教授 溝渕 将章 先生

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メッセージ

勉強だけに時間をかけて、周囲から褒められるのは、学生の間だけです。社会人になれば、勉強以外のことに多くの時間を費やさなければなりません。勉強は、あくまでも自分の知識を増やして自分の思考力を磨いていく、自分のためだけの行為です。自分のことだけをしているのに社会から認めてもらえるのは、ある意味贅沢なことであり、学生だけの特権です。ですから学生の間は、その特権を十分に生かして、たくさん勉強してください。

先生への質問

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上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。