制度は誰かが作っている
法律は誰が作った?
国際法は国家間の会議で、国内の法律は国会で採択されますよね。それを作っているのは、国際法であれば国家代表、国内法であれば政治家ですが、彼らが実際にその問題と直接関係する人達の利益を代表しているとは限りません。例えば、育児経験のない人が育児に関する法律を作る時、子育てに関係する人々が抱える問題をきちんと理解して反映されなければ、制度がかえって人々の生活を窮屈にするかもしれません。国際法においても、これまで世の中の仕組みを作ってきたのは、ごく限られた強大国の男性エリート達であり、彼らは自分たちが不利にならない国際秩序を作ってきました。例えば「核兵器不拡散条約(NPT)」では、核兵器の保有国と非保有国との間での義務の違いが不公平だと議論されたりします。
立場の弱い人も法を作る
しかし近年は、かつて植民地だった国や政治家ではない人々が制度作りに携わる事例が増えました。
核兵器に関しても、2017年に「核兵器禁止条約(TPNW)」が作られています。条約を受け入れた国の多くは、植民地支配をされていた小さな国々です。市民団体のようないわゆる普通の人々も条約制定を後押ししました。しかし核兵器保有国や、核兵器による抑止力の恩恵を受けている国は賛同していません。TPNWは核兵器の開発や保有などを全面的に禁止しており、自国が不利になる可能性があるからです。
法は合理的ならよいのか
影響力の強い国々が作ったNPTのような法律には、秩序維持に価値をおく特徴が見られます。一方でこれまで支配されてきた国々が作るTPNWのような法律には、被爆者やジェンダーなど個人レベルの価値が取り入れられています。多くの人が生きやすい世界にするために、これまで制度作りに携われなかった人々の意見に耳を傾けるべきだと考える法学者も少なくありません。こうした法律の課題を指摘して、世の中に伝えていくことも法学者の役割の一つなのです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 総合科学部 国際共創学科 准教授 掛江 朋子 先生
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