人工衛星のマイクロ波で洋上の風を見る
導入が進む洋上風力発電
現在、世界的に再生可能エネルギー導入の機運が高まっており、その中でも風力発電はヨーロッパ諸国を中心に普及が進んでいます。既にイギリスやドイツ、デンマークでは大規模な洋上風力発電が稼働しており、再生可能エネルギーの比率も高まってきました。日本でも2019年に再エネ海域利用法が施行され、洋上風力発電の本格的な導入が検討され始めています。
人工衛星からマイクロ波を照射
洋上風力発電における風車の設置場所は重要な問題です。風速と風向が安定した場所が理想ですが、どの場所にどのような風が吹いているかは、人工衛星からマイクロ波を海面に照射することで計測できます。理論的には、まったく風がない時の海面は鏡のようなのっぺりとした状態です。そこに角度をつけてマイクロ波を打ち込むと、反射の法則の通りに跳ね返り、マイクロ波は衛星には戻りません。風が吹くと海面が波立つために海面にはさまざまな角度がつき、一部のマイクロ波は衛星に戻ります。この戻ってきたマイクロ波の強度を計測することで海面の粗さが判断できます。一方で、海面の粗さと風の強さの関係を表すモデル関数が開発されており、それに当てはめることで、風の状態を割り出せるのです。
波長による問題を克服する
計測には主に、Cバンドという波長のマイクロ波を照射するヨーロッパの人工衛星が使われています。日本の人工衛星は、陸上の災害対応に適したLバンドという波長の長いマイクロ波を採用しており、海洋の測定は難しいものでした。ただ、近年では日本の民間の衛星に搭載された波長の短いXバンドを利用する研究が進んでいます。Xバンドでは雨などの要因でのマイクロ波の減衰が懸念されますが、一方でセンサを小型化しやすく、複数衛星によって計測の頻度を高められる可能性があります。これにより、正確な風の状況が得られると期待されています。この技術は、日本での洋上風力発電普及の追い風となるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 准教授 竹山 優子 先生
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